スーツケースメーカー RIMOWA(リモワ)
RIMOWA(リモワ)は、独国の旅行用鞄のメーカー。材質がアルミであれポリカーボネイトであれ、グルーヴ構造と呼ばれる凹凸がボディに施されていて、十分な強度を保ちながらとても軽く仕上げられているのが特徴。
スタートがアルミニウム製のスーツケースである一方、世界ではじめてポリカーボネイトを旅行用鞄の材料として採用したのも RIMOWA(リモワ)である。ABS樹脂が主流であった当時としては、画期的な事であったらしい。とは言え、このデザインを保つために今でも作業工程をあえて手作業で行うなど、伝統を重んずる企業でもある。
そして昨年(2016年)の秋、突如として歴史あるこの企業が、仏LVMHグループの傘下に入るとの発表があった。正直これには驚いた。RIMOWA(リモワ)は高級ラゲージブランドの一つではあるが、世界最大のファッション関係の企業体が、どちらかと言うと実用的なこの鞄メーカーに目を付けていたなど思いも寄らなかった。
ちなみに RIMOWA(リモワ)の 2016年の売上げは約 4億ユーロを超え、仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンはその RIMOWA(リモワ)株の80%を 6億4000万ユーロ(約730億円)で取得する。
まあ、ファッション関係のこうした企業体は、その企業体名を表に出すことは少なく、独自性を重んじる傾向があるので、品質とサービスは従来と変わらず提供されていくものと思われる。
ただ、グループの一員となったことから、グループ内企業とのコラボ製品が生まれてくる可能性は高い。恐いのは、それに乗じて値上げされること。
RIMOWA(リモワ)TOPAS ステルス 32Lの特徴
写真は、RIMOWA(リモワ)の TOPAS(トパース:英語名トパーズのドイツ語) STEALTH(ステルス)で、 容量が 32L、外形寸法が 55 x 40 x 20cm、重量が 4.8kgのスーツケース。
一部の LCCを除き機内に持ち込めるサイズである。
TOPASはアルミボディのシリーズで、ステルスはその黒色版。名が ステルスであるからと言って、「回析理論による鋭角面の電波の解析」に基づき設計されたわけではない。もちろん空港のセキュリティゲートを危険物入りで通過できるようなこともない。
試されても困るが、夜間の照明が少ない場所であれば、多少なりともその隠匿性を確認することが出来る。夜間の裏道で、自転車に乗って走ってきた人が気付かず、横を通り抜けるときに蹴飛ばされた実績がある。
反面、明るい場所ではかなり目立つ黒色である。
また、シルバーと違って、今のところ模造品がない(あるにはあるけど、色と質感が全く異なる)のも大きなアドバンテージ。真っ黒ではないこの独特なカラーを真似することは難しく、ユニークである。
こちらは側面の写真。TSAロック付きが 2箇所。暗証番号 3桁のダイヤル式。番号は自分の好きな数字に設定できる。
そしてその反対側の面には 蝶番が 3つ。全ての製品でユニークな製造番号はこちらの面に打たれている。
容積 64L以上の旧モデルには、両サイドに暗証ダイヤル付き、真ん中にダイヤル無しの計 3箇所のロックが付いていた。ELECTRONIC TAG仕様の製品と筐体を共有する為か、新型になって真ん中のロックが省略されてしまった。
なお、この TOPAS 32Lには、サイズが小さいにもかかわらず、大型容積 100Lクラスのスーツケースと同じ数のロックと蝶盤が付く。ある意味非常に贅沢な作りであり、強度的にも申し分無い。
落ち着きのない子供のように走り回るマルチホイール
続いて下半身の重要なパーツである 4輪マルチホイール。ホイールは RIMOWAのネーム入りで径は 50mm。
非常に凶悪なパーツである。路面のわずかな傾きに即反応し、勝手に走り出してしまう。抵抗が少ないのだ。
坂道以外、スーツケースの重さを感じさせないくらいにスムースに移動してくれる。それはそれで良いのだが、止まっていることがとことん苦手なホイールでもある。落ち着きが無く、常に片手でホールドしていなければならない。
さすがに長時間ハンドルを持っていると疲れるので、そんな時は側面についているゴム脚を下にして横置きすればよい。
ボディカラーは黒ではなく、濃いダークブラウン
巷ではステルスのボディカラーについて、ツヤ消しブラックとか、漆黒の言葉を使って表現されるのを時々見かけるが、実際にツヤ消しブラックな箇所はショルダーパッドとプラスチック部分である。
ボディ本体のアルミは、黒に近いダークブラウン。髪の毛を濃いダークブラウンに染めてくれと頼んで出来上がってくるのが多分この色。
色の比較用に上に載せているのは WILDSWANSの長財布 WAVEで皮革はサドルプルアップのブラック。サドルプルアップ自体、漆黒ではなく若干茶が混じるのだが、それと比べてもあきらかにブラウン掛かって見える。それは晴れた日の昼間や、昼光色の照明の下だと特に顕著で、逆に白色蛍光灯の下では黒く見える。
自分としては、真っ黒でない落ち着いた不思議なこの色を結構気に入っている。
このスーツケースは、日本の正規代理店であった林五の RIMOWA Store 東京(銀座)で購入したもの。実物を見に店舗に行ってみると展示品にはキズが付けられていた。商品説明の際、この黒はとてもキズ付きやすいです。ほらご覧の通りになりますと、そのキズを敢えて見せてくれた。展示品のこの不自然極まりない位置のキズは説明用に故意に付けられたモノなのかも知れない。と想像してみたり。
手作り感満載
最初に言ったとおり、RIMOWA(リモワ)の TOPASは手作業の工程が多い。この写真を見てお気づきであろうか。奥から手前に折り曲げられ、重ね合わせられたアルミニウム筐体の板のリブの位置が前後左右どこも一致してない。このような箇所がそこかしこに見つかる。
そこかしこに見つかりつつも、最終的にはガタもなく、きっちりと隙間無く蓋が閉まってくれる。各部品の位置合わせ・組立は職人により現物合わせで行われている。逆にそのようなワザを使わないと、このように組み上がらない。日本とは一味違うが、多分これが向こうで言うところの職人芸。正直、この一癖ある組立精度は、ハンドメイドと言う言葉だけで片付けられるレベルでなく、お世辞にも賞められる品質であるとは言い難い。
一般的な目で見た場合、品質は決して高くないとの評価が下されると思う。しかしながら、このような発見は「これぞ職人芸!」的な感動を与えてくれるシーンでもある。自分はこれらを見て楽しませていただいている。
容量はビジネスバッグ 2個分プラスアルファ
このスーツケースの容積は 32L。どのくらいか見てもらうため、ビジネスバッグを格納してみた。収めた鞄のサイズは W43.0/H31.0/D9.5cmである。TOPAS 32Lの外形が、W40.0/H55.0/D20.0cmなので、ちょうどこのビジネスバッグを二段重ねした状態で、周囲に 5cm前後の余裕が生まれる位の収納スペースだ。
機内持ち込みの際、問題となるのは重量
さて、この 32Lのスーツケースは、機内に持ち込める外形寸法制限内である。一方、厄介なのがもう一つの制限である荷物の総重量 10kg以下。こちらが問題だ。スーツケース本体の重量が 4.8kgもあるので、中に詰め込める荷物の重量は 5.2kgでしかない。
自分の活動を元に、どの程度の荷物を詰め込めるかシミュレーションしてみる。
例えば、探さないでください旅に出ますと書き置きを残し、国内のどこかに写真を撮りに出かけるとしよう。この場合、預けずに自分のそばに置いておきたい荷物は貴重品であり精密機器であるカメラ類とノートPCだ。そして必要最低限の荷物は、
持ち物 | 重量 |
---|---|
カメラ本体 | 700g |
レンズ 2本 | 1,200g |
カメラ・レンズインナーバッグ | 500g |
三脚 | 1,000g |
ノートPC | 1,000g |
下着/靴下(2日分) | 500g |
Tシャツ(長袖) | 300g |
洗面具 | 500g |
文房具 | 300g |
携行バッグ | 500g |
合計 | 6,500g |
ご覧の通り、スーツケースの重量を加えると 11.3kgとなり、1.3kgオーバーする。荷物はこれ以上減らすことは出来ない。どちらかと言うともっと詰め込みたいくらいだ。
元々、重たい荷物を手に持つことなく、背負うことなく移動したいために購入したのだが、手元に置いておきたい肝心の荷物を収納すると機内に持ち込めなくなる。ドウイウ コト デスカ コレ。
表中にある荷物は、実際にリュック型のカメラ鞄に詰め込み、飛行機で移動したこともある。もちろん、鞄自体が軽いので機内に持ち込む事も出来た。
試しに RIMOWA(リモワ)の30L以上の機内持ち込み可能なスーツケースを一覧にしてみた。(2017/03/31現在 正規輸入品)
タイプ | 容量 | ケース重量 | 収納可能重量 |
---|---|---|---|
SALSA AIR | 33L | 1.9kg | 8.1kg |
SALSA | 32L | 3.2kg | 6.8kg |
SALSA DELUXE | 32L | 3.7kg | 6.3kg |
BOLERO | 32L | 3.6kg | 6.4kg |
LIMBO | 32L | 4.2kg | 5.8kg |
TOPAS(キャビントローリー) | 32L | 4.1kg | 5.9Kg |
CLASSIC FLIGHT | 33L | 4.0kg | 6.0kg |
TOPAS | 32L | 4.6kg | 5.4kg |
TOPAS STEALTH | 32L | 4.8kg | 5.2kg |
TOPAS TITANIUM | 32L | 4.8kg | 5.2kg |
機内持ち込み用としては使いどころが難しい
こうしてみると、少なくとも機内持ち込みを前提にカメラとノートPCを持ち運ぶには、ポリカーボネイト製のスーツケースを選択する必要があるようだ。
う~~ん。どうしようか。
それにしても、最軽量の SALSA AIRとの重量差がなんと2.9kgもあるなんて。TOPASを機内持ち込みで使うと半分がスーツケースの重量。荷物を持ち運ぶと言うより、スーツケースを持ち運んでいるようなもの。考えようによっては非効率だ。いや、考えなくても非効率。
貴重品や精密機器をスーツケースに格納しつつ機内に持ち込み、それ以外の着替えとかをセカンドバッグに詰め、セカンドバッグを預けると言う、やや変則的な手段が無くもない。結局、機内に持ち込むスーツケースは痛むことがほとんど無いので、耐久性は無視してしまって、より荷物を詰め込める軽いスーツケースを選ぶのが正解なのかもしれない。
手荷物を預ける際は、重量超過した場合に手痛い出費が間違いなく発生するので都度確認していたのだが、機内持ち込み荷物の重量についてすっかり頭から抜け落ちていた。大失敗である。
今回の選定ミスは、このスーツケケースが悪かったわけではない。通常の荷物の量であれば全く問題は発生しない。スーツケース自体はとても良い品なので、機会があれば使いたいと思っている。
と言うことで、探さないでください代替品探索の旅に出ます・・・・・。
買った良いがほとんど使うことなく天井裏物置に収納されているスーツケースを引っ張り出してのレビューでした。使用回数が少なすぎてあまり参考にならないレビューだったかも、、
RIMOWA(リモワ)のスーツケース部品はヨーロッパ域内で製造されている。また、独国ケルンに自社工場を持つ他、チェコ、カナダそしてブラジルにも工場があり、計 4箇所の工場で組み立てられる。
こちらのスーツケースの銘板には Made in Germayと書かれ、独国で組み立てられたものとわかる。部品はほぼ同じなので、独国で組み立てられたから良いとか、どこそこ産は悪いなどと言える程の差は無く、どちらかというとその違いは味のようなもの。
ちなみ Made in Germayの製品は、各部材を止めているリベットが限りなく強く打たれている品が多い。どの工場で組み立てられようとそれぞれであり、それなりであり、また、そこそこである。少しばかり違ってもマニア以外は気にしない。