木工作業に欠かせないF型クランプ
最も頻繁に使うクランプである。材料を作業台に固定したり、接着剤で貼り付けた際の養生に、あるいは仮組に。
フレームが太く、充分に強い締め付け力を持つF型クランプは、鉄工作業にも用いられる。また、DIYは何をするにも一人作業なので、自分の手の代わりになるこうしたクランプは必須道具と言って良い。
通常クランプは、ワークに対し2箇所以上で固定する。1箇所のみの固定だと、固定したその 1点を中心にワークが回転してしまうからだ。したがって、最低必要本数は 2本となる。また、少々大きめの材料を固定するには、2箇所では固定力に不安があり、固定箇所数をより増やす必要がある。
また、多くの部品を使った何かを製作する時は、その組み立ての際、さらに数がほしくなる。自分は、機会ある毎に買い足した末、いつの間にか 10本以上保有することとなった。
さて、写真の F型クランプは、バクマ工業のワンタッチパワークランプ。Made in Japanである。
ワンタッチかどうかは別にして、また、パワーがあるかどうかは別にして、F型クランプは、ほぼこちらの製品で統一しつつある。
シーンに応じて、適正サイズを選択
写真は保有する 同シリーズ F型クランプのサイズバリエーション。
真ん中は、スタンダードなタイプ。全長 200mmで、アーム長 80mm。スタンダードと言っても、全長が 100mm~1,000mmまでの品揃えの中の一つである。
左は、首長パワークランプという名の製品で、全長 200mm、アーム長さが 120mmの特殊なタイプ。その名の通り標準タイプに比べ 40mmほどアームが長い。懐が深いので、ワークの端から離れた箇所を固定出来る。全数をこれで揃える必要は無く、1~2本持っていると、いざという時に重宝する。
一番左側は小型の部類で、全長 100mm、アーム長が 60mm。ただ、写真を見てわかるとおり、締め付けボルト部分が共通部品であるせいか、コンパクトとは言い難い。また、自分は短いアーム長が生かせる機会に出会ったことはなく。重宝しているとは言い切れない。
見出しには、「シーンに応じて、適正サイズを選択」と書いたが、自分の場合に限って言えば、真っ赤なウソである。真ん中のスタンダードなタイプ以外のサイズを必要と感じたことはほぼ無い。多分、作業台のサイズと製作対象物の大きさから見てこのサイズのクランプが程良いところなのだろう。
普通のクランプと安価なクランプの差
F型クランプは、ほぼこちらの製品で統一しつつある。と最初に書いたが、こちらはウソではなく、本当の事である。その理由の一つがこれ。
写真上は、全長 200mmで、アーム長 80mmの 1本千円を下回る価格で売られている商品。写真下が同サイズのバクマ工業製のもので、価格差は 400円程度。ネジ部の表面メッキ処理が異なるのは一目瞭然であるが、問題は、そのネジ部の加工そのものにある。
写真上の製品のネジを台形ネジと呼んでものなのか、ハッキリ言って疑いたくなるような形状である。一応そのようなものと書いておく。ねじ山の断面の角度も広く、三角ネジに近い。また、その山の頂点付近には何やら不思議な溝がある。ネット通販で購入したもので、開封してこれを見たとき、思わず目を細めてしまった。
一方、写真下のバクマ工業製のネジ部は、仕上げ加工が施されているが如く、ねじ山が綺麗に並ぶ。
F型クランプの締め付けネジは、加工精度が求められるものではないが、精度が余りにも悪いと、ガタが生じたり、締め付けネジが斜めに傾き、受け側の中心とズレが生じ、しっかりと締め付けることが出来ない。
また、ネジを回す際の抵抗がが増え、スムースに締め付けられなかったり、一度締め付けたネジを逆に緩めようとする際に大きな力が必要になる。弊害は多い。ちなみに、実際にワークを締め付け固定してみると、明らかにその差を感じられた。
価格差で 400円もある。なのか、400円程度なのか。自分の評価としては、400円の差であればこちらを。となる。上のクランプは安かったので試しに購入してみたが、もう二度と買うことはない。
写真上は、バクマ工業製の F型クランプの締め付けネジ先端。写真下は 軽量タイプの C型クランプの先端。ホームセンターなどで手に取って見ただけではその差はわからないが、カバーをはずすとご覧のように全く異なる部品を使っているのが確認出来る。一方は削り出しで、一方はプレス絞り加工である。プレス絞り加工は非切削加工なので、材料ロスが少なく、一度金型を作ってしまえば、以降、大量に安く作れるメリットがある。
ただ、こうした力が加わる箇所に使用するにはやはり強度不足に陥る可能性は否定できず、実際クランプの故障はこの部分に集中する。故障する原因は、プレス絞り加工された先端部分の強度だけではなく、採用する先端のスイベル(首振り)機構にもある。スイベルは、フェリカル・ジョイントのような球体が理想であるが、板の面で受けるより、やはりそれに近い削り出し加工されたバクマ工業製のような先端ネジ受け構造のほうが圧倒的に強度に勝る。
さて、片や F型クランプ、片や C型クランプ。対象が異なるクランプな為、比較するには無理があると言われるかかもしれないが、過去に購入した安価な F型クランプの中にはこのような先端部品が使われていた商品が実際にあった。そして案の定その部品が壊れ、今は手元に無い。
お勧めの F型クランプ
少し持ち上げすぎではないかと言われそうだが、まあ、確かにそうかもしれない。だからと言って、受け狙いでこんな事を書いているわけでもない。大抵そのような狙いは途中でバレてしまって、逆に本人の狙いとは反対の反応を呼び起こしてしまう。
自分がお勧めする理由は単純である。
今まで出会った F型クランプ中で、これが最も自分にとってコストパフォーマンスに優れると感じた。それでしかない。
世にはもっと使い勝手の良い品があるのかもしれない。
そんな品に出会うまでは、これを使っていく。
小型作業台での使用例
写真は 3年前に自作した作業台である。製作したときのコンセプトの一つが「どこでもクランプ」であり、実際、天板の上に載せられる大きさのワークであれば如何様な方向からもクランプで固定出来るようになっている。ポイントは、2つに分けられた天板の間の溝であり、そして作業台自体の小ささである。
小さな作業台なので、大型の製作物を作るときは四苦八苦する。しかしながら、もっと大きな作業台を別途作ろうとは考えない。考えてはいけない。すなわち、設置スペースが無いのだ。
この大きさの作業台でも決して天板の面積以上の材料を扱えないと言うわけではなく、クランプによる材料の固定のし易さ故、例えば、高さ 1,800mm超えの本棚だったり、例えば長さ 1,000mm超えのテーブルだったり、例えば、長さ 2,000mmのベンチなど、この自作作業台を用いて製作してきた。小さな作業台であっても、クランプを駆使することで、大型の作業台並みの機能が得られるのだ。でも、はっきり言って苦労するし、その覚悟は必要(汗