ミネルバボックスの二つ折り財布
正直、シボのある皮革製品は好みではなかった。どちらかと言うと、平坦で、その平坦な面が使っていくうちにツルツルあるいはテカテカに変化してくれる皮革が好き。
友人から食わず嫌いと言われたことを切っ掛けに、シュランケンカーフやミネルバボックスの鞄を使ってみたこともある。先般、このブログで紹介したパパスショルダーもその一つ。そして、そのパパスショルダーに使われているミネルバボックスが、意外と面白い皮革であることに気付いた。色の変化もさることながら、ツヤの出方が強烈。日一日と使う毎に姿を変えていく。そんな訳で、休日にしか使わない鞄などではなく、常に持ち歩ける品が一つ欲しくなった。
写真はカンダミサコの二つ折り財布。色はカスターニョ(焦げ茶)である。ミネルバボックスには、このカスターニョに近い色としてタバコがある。タバコが使っていく途中から紫色が加わり濃く深い色に変化するのに対し、カスターニョは、自身をより焦がした色を経て、黒に近づく。とは言え、数あるミネルバボックスの色の中にあっては、その変化は控え目なほうである。
この財布の半年後のエイジング具合はこちら「ミネルバボックスのエイジング。画像+動画。カンダミサコの二つ折り財布(半年使用)」
ミニ財布とサイズ比較
ミニと呼ばれる財布達と並べ比べてみた。機能的にはフルサイズの二つ折り財布に匹敵するのだが、下の表にある通り、ミニと呼ばれるサイフと寸法的にはそれほど変わらない。この為、男性に比べ手の小さな女性であっても、持てあますことなく使用出来る。ただし、実際に持ってみると、寸法の差以上にミニと呼ばれる財布の小ささや軽さを感じたことも確かであった。
これは錯覚などではなく、紛れもない実感。
W | H | D | 投影面積 | |
カンダミサコの二つ折り財布 | 90㎜ | 98㎜ | 25㎜ | 88.2㎠ |
WILDSWANSのパーム | 80㎜ | 100㎜ | 20㎜ | 80.0㎠ |
万双のブライドルミニ財布 | 87㎜ | 95㎜ | 15㎜ | 82.65㎠ |
工夫を凝らした不思議な構造
財布の外側は一枚革で、ムラのないシボ。シボは大きくもなく小さくもない。このシボの大きさや深さでかなり雰囲気が変わる。ミネルバボックスは型押しによるシボでは無いため、意外と不均一なのだが、外側に相応しい部分を選んで使ってくれている。
内側。良く見ると、カード段の階層には互い違いで表相の異なる皮革が使われている。また、小銭入れのボディは他の部位とは異なる表相の皮革があてがわれている。見た目を損なうことなく皮革を無駄なく余すことなく使うための手段であるが、通常、パターンオーダーでもない限りこのような手間の掛かることは行わない。カンダミサコは、全ての製品を夫婦お二方で製作している。だからこそ可能な気遣い。
カード段は横刺し。横刺しは財布の型くずれ防止と小型化に貢献する。
驚きはこれだけではなかった。札入れ部分の裏革が磨かれている。擬似プエブロである。この財布一つで、バダラッシー・カルロ社(Badalassi Carlo srl)が醸す色々な風合いの皮革が楽しめてしまう。
コバもご覧の通り綺麗に磨かれている。
カンダミサコの皮革製品のコバには、本体の皮革に合わせ様々な色が使われる。万双はつや消しの黒、GANZOは一部を除いて透明な赤、WILDSWANSがツヤ有りの黒など、色や仕上げが統一されているこれらのブランドとは一線を画す。
皮革に食い込み過ぎず、弛むことも無い。間隔も綺麗な縫製。
「従来の2つ折り財布の機能は満たしたまま、最低限のステッチになるようにパターンを工夫」(カンダミサコのウェブサイトより抜粋)。したがって、縫製箇所は驚く程少ない。ステッチは皮革の伸びを抑制する。縫製箇所が少ないこのサイフが、どのような形状変化を見せてくれるのか、こちらも興味津々。
札入れ部と同様に、小銭入れ内側も裏革が磨かれている。使っていくうちに、毛羽立つ方向に向かうのか、それともツルツルになるのか。目立たないが、内側にはカンダミサコの紋章が押されている。
この財布の小銭入れ部の謎の構造。この写真だけ見ても何が謎かわからない。
使い始めて一週間後。ほんのわずかだがツヤがそこかしこに出てきた。
そして小銭入れの特殊な構造の種明かし。小銭入れの背面がフラップの如く折り曲げてあるだけの構造。
「最低限のステッチになるようにパターンを工夫」(カンダミサコのウェブサイトより抜粋)
このような構造となっているとは思いもしなかった。当然、該当サイトの写真を見ても気付かない。正直、商品が到着して、この構造を知ったとき、”なんじゃコレ、手抜きか?”との感じる想いが漲った。普通なら、小銭入れの底近くか入り口近くを縫い込んで固定し、札入れの皮革との間のスペースをカード入れとして利用するのが一般的。この財布は縫い込まれていないのだ。
ウェブサイトには、「小銭入れの後側にもカードが数枚纏めて入ります。」(カンダミサコのウェブサイトより抜粋)と記載されている。しかし貫通している隙間にカードを入れても落ちない?小銭の重さで小銭入れの底が抜け落ちない?などと、やはり妙な不安が頭をよぎる。果たして、この構造に問題は無いのか?
そして、一週間使ってみて・・・・。何~~~~の問題もない!使いやすい!。小銭入れのフラップが折り目側ではなく財布の外側に付いているので、小銭入れの内側に光が通り明るい。小銭入れ裏側のスペースへのカード収納も、要らぬ心配、何の問題もなかった。
既存の財布に捕らわれない柔軟な発想により生まれ、奇しき構造と造りを持った、何とも不思議な財布である。カンダミサコは、色鮮やかな皮革を使い、奇抜ではあるがあくまで控えめで、どことなくファンタジックな印象を受ける製品が多い。一方で、今回そのような面とは別に、使われることをよくよく考えて創られていることや、随所に気配りも感じられた。
こんなサイフなので、自分で使うのも良いが、プレゼントにも向いている。人へのプレゼントは、心を込めて渡すモノである。安心して贈ることが出来るカンダミサコのココロの隠ったこのサイフは、そんな用途にもお勧めできる。
それにしてもこの財布は面白い。何かに気付く毎に「何コレ、スゴイ」と嬉しさのあまり自然に口元が緩みクスリと微笑んでしまう。多分、それは感動……
もしも、手に取った者が少女とかであったなら、きっと飛びっきりの笑顔であるに違いない。もしも少女であったなら……まあ、あれだ。現実を想像してくれるな。
商品取り寄せ時の注意事項
(2017/12/26追記)
カンダミサコの商品は、女性向けの色やデザインが多数を占めるが、中には野郎が使っても問題無い製品がある。そして、それらはとても魅力的なものだったりする。
ところで、カンダミサコの商品の購入方法はいくつかあるが、直接カンダミサコのサイトからも購入出来る。ここで厄介事が発生する。
カンダミサコは、どこからどう見ても日本の女性の名前だ。商品の発送元も、「カンダミサコ」になっているのだ。最近は頻繁に送られてくる。と言うか、こちらが注文して送ってもらっているのだが。
自分は、大抵昼間は仕事に出ているので、宅急便の受け取りは当然の事ながら女房殿となる。そしてそれは女房殿が知らない女性名からの宅急便。別に、道徳に背いた不埒な行為をしているわけではないので、こちらとしては言い訳とか事情を説明する気は無く、そのまま受け取っている。敢えて説明すると、言い訳っぽくなってしまうからだ。
ただ、女房殿としては、やたらと頻繁に送られてくるカンダミサコなる不審な送り主の正体はもしかすると気になっているのかも知れない。
あちらはあちらで、こちらを疑っているような素振りとなるため聞いては来ない。なので、そのまま放置である。
少々、意地悪な気がしないでもないので、いつになるかわからないが、鞄の一つでもプレゼントしようかと思っている。夫婦間の余興である。
おまけ
小銭入れ部のマチは、カード入れのマチとしても機能する。試しに小銭入れ裏側スペースにカードを 10枚収納してみた。厚さが三つ折り財布並みになるが、この状態でも問題無く二つ折りに出来、ケツポケ使用にも耐えうる。
このような使い方、よい子は真似しないように……