細かい作業用に本格的なルーペが欲しかった
金属加工、その中でもエアリューターの先に超硬ロータリーバーを取付けた削り作業の際に出てくる切り屑は凶悪である。
髪の毛よりも細い切り屑がわんさかと空中を舞う。この作業をするにはある覚悟が必要。指や手の平に切りくずがトゲとして突き刺さるのだ。
痛みは感じる。ほぼこの辺りにトゲが刺さってるものと範囲はある程度限定できる。だが、細すぎて、細かすぎて肉眼ではトゲが探しににくいのだ。
ルーペの出番である。普段使っているルーペは、ケンコートキナーのPKC-024。直径 90mm。
エアリューターを使った削り作業の後は、決まってこのルーペとピンセットを使って、涙目になりながら外科手術を施す。
時々だがハンダ付け作業も行う。
とは言え、真新しい基板にパーツを組み込むようなものではなく、専ら修理である。
不具合を起こしている電子部品を抜き取り、代わりに新品部品を取付ける。
とても単純な作業なのだが、滅法気を遣う。
ただし、決して器用ではない自分にとっては神経をすり減らされる作業で、短時間で心も目も疲れ切ってしまう。
トゲ抜きもはんだ付けも、その他細かい作業にはルーペが必須で、もう少し本格的なものが欲しかった。
今回、縁あってオーツカ光学の LED式 照明拡大鏡を手に入れることが出来たので、早速レビュー。
購入したのは目が疲れにくく最も汎用性が高いと言われているレンズ倍率 2倍の製品。LED式 照明拡大鏡のSKKL-B型。
双眼ではないのに両目で覗ける大口径レンズと長寿命LED
こちらは LEDランプカバーを裏から見た写真。
LEDが埋め込まれたカバーの直径 230mm。内側のレンズはゴム製取付枠で囲われ、レンズ本体の直径は 130mm。ゴム枠へのハメ込みを除くと有効径は約 125mmにもなる。
こちらは、よく見かけるはんだ付け作業用のスタンドルーペ。購入履歴を見たら、2014/12/13の日付だった。レンズ径は 65mm。拡大倍率は 2.5。
小さなレンズだと、どうしても片目でしか見ることが出来ないため、距離感、立体感が大幅に損なわれ、ハンダごての先端を狙い通りに導くことが出来ずやきもきしてしまう。
がしかし、大口径レンズを備えたこのオーツカ光学の照明拡大鏡を使うと、一つのレンズを通して対象物を両目で見ることが出来るのだ。
覗く時の注意点としては、アイポイントと作動距離を適正に取ること。これを守らないと、レンズの各収差が強調されたり、ひいては目が甚だ疲れることになる。2倍レンズの場合、アイポイント(目とレンズの間隔)は 150mm、作動距離(レンズと対象物の間隔)は 160mm。
—閑話休題—
同社の「LED作業・検査照明 モデライトML230F」について、オーツカ光学の公式 WEBサイトに公開されている 2021年4月28日付けブログにこんな記載がある。
2012年6月の発売以来、現時点(2021年4月末)まで LED切れや LED自体の故障が無い高い信頼性が売り
これって、ここ数年の間に部屋の LED電球をいくつも交換している自分からしてみれば、かなり凄いことなんですけど……
LED式 照明拡大鏡 SKKL-B型が同じシリーズの LEDを使っているとはどこにも書かれていないけれど、多分きっとそう。そうであるといいな。
軽さは正義だった
自分の中で、Made in Japanのイメージは「手抜きが無く堅牢で壊れにくい」。悪い言葉で言うならば、オーバースペック。
このオーバースペックこそが安全・安心につながっている理由の一つである。そんな説もある。
このオーツカ光学の LED式 照明拡大鏡 SKKL-Bもそれに違いない。と、商品が届くまでそう信じて疑わなかった。何より老舗メーカーだし、姿形も何となく無骨だし。(無骨は嫌いじゃない)
そんな中、それが届いてビックリ。見た目、大きさに比してものすごく軽いのだ。
写真は、LEDレンズユニットを支えるブラケット支柱は φ16、アームは φ13の中空材(磁石に着かないので多分ステンレス)を使っている。支柱パイプの肉厚を測ったところ 1.6mmあり、手では到底曲げることは出来ない。
2本のパイプを交差状に固定している部品は硬質プラスチック。支柱からのアーム落下防止カラーはアルミニウム。
厚さ 12mmのベースはアルミダイキャストで、こちらも厚さに比して軽い。
裏面を見て納得する。補強リブは大抵は十字程度で済ませるはずが、長手方向に3本、横に4本のリブを通している。
リブをふんだんに使う事で剛性を確保しつつ軽量化が図られているのだ。
軽量化を突き詰めることで、各パーツの設計強度を抑えることができる。強いてはコスト削減へつながる。それでも製品全体の強度は十分に確保する。
これってとても凄い技術だと思う。
設計技術者としてはとても勇気がいることで、ややもすると安っぽくなったり、手抜きなどとも言われかねない。
見た目でも、実際に手に取って使っても、安っぽさも強度不足も一切感じさせないこうした作りは、本当にすごいと思う。
とても残念なことにLEDは取り外し可能なACアダプタで駆動
別にオーツカ光学に罪があるわけではない。それでもここで書きたくなる。
自分は ACアダプタが嫌いだ。
ACアダプタは、滅ぼすべき敵。油断すると限りなく増えていくランク S指定の討伐対象。理由は以下の過去記事に。
今のモデルは 2019年2月に発表されたもので、それ以前のモデルは、光源が蛍光灯でテーブルスタンド内に電源が組み込まれ、本体から直接 ACコードが引き出されていた。
モデルチェンジでテーブルがフラットになってワークスペースが増えたのはとてもうれしいのだが、もしも 旧型の電源内蔵型が今でも販売されていたならば間違いなく旧型を選んでいた。
それくらいに自分は ACアダプタが嫌いだ。
まあ、仕方がない。
ACアダプタ容量は 36Wで、消費電力 9Wに対しかなり余裕がある。ACアダプタが熱を持つことは無かった。
SKKL-B型の LEDランプユニットから ACアダプタまでの電源コードは、支柱のパイプ内を通過させている。
組み立てた際にすっきりするのだが、パーツを分解して収納する際、ベース部、支柱、アームそして LEDランプユニットの全てが電源コードで接続された状態になるため、納めるのにかなり難儀する。
自分は、分解時に各パーツがバラバラになるようにパイプから電源コードを引抜いている。
収納のみならず、分解も少し楽になった。
ACアダプタ、クソたわけ。
オーツカ光学のLED式照明拡大鏡の個人ユースでの位置づけ
個人で購入するには躊躇してしまう価格。余程の意義を見出せない限り購入しようとは思わない。自分も含めた一般庶民の考え方はこうに違いない。
で、一般庶民であるはずのオマエが何で購入したん? と、聞かれた気がしたので答えよう。
自分には購入に値する理由があった。
たかだか 3つの部品を交換すれば治るはずの機器の修理費用に 10万円以上を見積もられ、まあ、確かに古い基板であるし、代替基板などあるはずもないし、ランドも剥がれているし、それでも見積をお願いしたら、やりたくないらしく目が飛び出るほどの金額が提示された。
メーカーの気持ちはすごくよくわかるので素直にあきらめた。結果、みずからやらざるを得ない状況に陥った。
失敗が許されず、万全を期して修理(はんだ付け)に臨むべく購入したのがこれ。
もしも、修理が失敗した場合、世界が終わるのと同じくらい絶望したと思う。
と言うのは実はブラフで、本当の理由は金属粉由来のトゲ抜きである。
実際に使ってみての感想は、
- 安くはないのだが、これ以上安くしてくれとは決して言えない位の造り。
- 虫眼鏡タイプのルーペに比べ、両手、両目が使えて圧倒的に作業が楽で疲れが少ない。
- LEDリングライトは、デスクライトとしても優秀。無影だし。ただし、デスクライトとして使うのであればフリーアーム型がお勧め。
- LED接写用光源としても使えて便利。
- 思ったより用途があるらしい。居間の棚に置いておくとなにやら勝手に家族が使ってる。
ところで、家の中で最も稼働時間が高い用途が何かと言えば、女房のマニュキュア塗りと爪の手入れ。すこぶる具合がいいらしい……
以下、自分用メモとしての資料
項目 | 名称/諸元 |
---|---|
製品名 | LED照明拡大鏡 |
型式 | SKKL-Bx2 |
公式WEBサイト | https://www.otsuka-op.com/ |
本体 | |
重量(Kg) | 2.1 (レンズ無し・本体重量) |
全高(mm) | 330 |
ベースプレートサイズ(mm) | 188 × 320 |
支柱/アーム(mm) | φ16/φ13 |
照明 | |
光源 | LED |
色温度 | 5000K以上 |
演色性 | Ra90以上 |
保護拡散カバー外径(mm) | φ226 |
レンズ | |
倍率 | 2 |
レンズ径(mm) | φ130 |
アイポイント(mm) | 150 |
作動距離(mm) | 160 |
視野(mm) | φ170 |
重量(g) | 400 |
電源 | |
ACアダプタ | IN:AC100V 50/60Hz OUT:DC24V 1.5A |