作者が儲かっているのか心配
先日研いだ喜作の切り出し小刀の出来がとても良くて、21mmを 1本、18mmを 2本の計 3本を追加で購入してしまった。
喜作の切り出し小刀に巡り合わせてくれた神様に感謝。
実際に研いだ時の記録は下記リンク。
しばらくは、この 3本 + 1本でローテーションを組んで行こうと思う。(1本は特殊な使い方)
喜作の切り出し小刀の良いところ
- 裏押しがほぼ平面。
- 裏押し、刃面が共に鏡面に近い仕上げ。(ベルトサンダーやグラインダーの跡なし。つまり砥石を使って仕上げている。)
- そこそこ安価。
- ネット購入可能で入手しやすい。
- 当たり外れが少なく、安定した品質。
- 裏スキが浅めで研ぎ時間が短くて済む。
- 白紙で研ぎやすい。
喜作の切り出し小刀の悪いところ
- 作者が儲かっているのか心配になる。
- 切り出し角が鋭角。(用途、好みによる。使っていくうちに多分慣れる。)
と言うことで自分としては、入手性の良さと共に、この出来でこの価格なのは、かなりお買い得だと思っている。
写真は、切り出し小刀の紙箱。よく見ると「切り出し小刀」の文字が箱毎に異なっている。ハンコウの位置やインクの濃さもばらばらで、印刷物ではなく、手書き、手作業である。桐箱ではないのに珍しい。
- 2022年4月7日 久々に通販サイトを覗いてみたら価格がとんでもなく上がってた。しばらく買えないかな……
- 2022年9月16日 通販サイトを覗いてみたら売り切れ……
白紙か青紙か
日立金属の高級刃物鋼(YSSヤスキハガネ)のカタログには
白紙、黄紙は基本的には不純物を極力低減した純粋な炭素鋼であり、適切な鍛錬と熱処理によって切れ味良く、砥ぎ易い理想的な刃物を製作することが可能です。
青紙はタングステンやクロムを添加して熱処理特性及び耐摩耗性を改善した鋼種で永切れする刃物になります。
と記載されている。
わずか数行の文章なのだけど、ものすごく重要なことが書かれている。
他の金属元素の力を借りず、鉄と炭素のみにより刃先をつくる白紙こそ、真の THE 鋼.なんだと思う。
カタログ中には、焼き入れやなましの温度と硬さに関するグラフが例として示されていて、一部のグラフからは、青紙と比較して白紙の熱処理の難しさが伺える。
上のカタログからの引用文の通り、適切な鍛錬と熱処理によっての白紙に対し、青紙は、熱処理特性及び耐摩耗性を改善した鋼なのだ。
白紙を使う鍛冶屋はチャレンジャーである。
熱処理特性が改善されている青紙を使っているにも関わらず、出来上がった刃物の刃先が欠けやすかったり曲がったりするのは、火造りが下手な証拠とも言える。
研ぎ減らしていけば、いずれ良い刃に巡り合えるかも知れない。が、自分はそれほどのん気ではない。
と、何やら生き急ぐ。
まあ偉そうな事を言ってきたが、実のところ、白紙と青紙の切れ味の違いなど、全くわからないのだ……
ただ、白紙を使う。そうした心意気にはとても惹かれるものがあって、この喜作の切り出し小刀は、そんな白紙の刃物。
裏スキの形と裏押し。平面に研ぐことについて
切り出し小刀の裏スキは、見た目で分けると 2種類。
下が喜作の切り出し小刀。上の鑿の裏スキのようなタイプもある。
上のタイプは大抵 1万円を超える。
それらは、使用することとは無関係な修飾が施されていて、見た瞬間、おおっと思う。何本か購入してみたが、自分には無用なデザインであると結論付けるまでにそれほど時間は掛からなかった。
目の毒である。
研ぎやすさから見れば、研ぐ面積が少ない下のタイプに分がある。
ただし、いずれにせよそれは裏押しが平面であることが前提。
以前購入した切り出し小刀は、刃先、むね、そして刃の裏側の 3か所別々に研がれていて、それぞれの面ごとにベルトサンダーやらグラインダーの研ぎ跡がしっかりと残っていた。
ネットに上がっている写真ではわかるはずもなく、実際手に持ってみると一目瞭然で、エッジ部分など、裏スキの深さ以上に削られてしまっている。
人間、アキラメルのは良くないよね。でも、明らかに見ちゃいました。
あまりの出来の悪さに研ぐ気が失せて放置。
こんなのに出会ってしまったとき、少しばかり腹を立ててもいいと思う。
だってね、こうしたものを何とかしようと手を出したら、裏と表を一生懸命研いで、刃先や裏を確認する都度に、
くぁwせdrftgyふじこlp(汗
そんな風に悪戦苦闘する自分を容易に想像できてしまうのだよ。
苦闘の末に仕上がった切り出し小刀の裏は、あれほど広かった裏スキは見る影もなく小さくなり、形はいびつと化す。
自分の研ぎ方だと、毎回そうなる。研ぎ方が悪いのだろうか。
ならば、どう研げば良いのだろうか。判らず終いである。
作った鍛冶屋さんの落としどころと言うか、妥協と言うか、その結果が形に反映されるのだけれど、
くぁwせdrftgyふじこlp(汗
を経験しているこちらから歩み寄る気はないし、結局折り合いがつかないので、以降同じ銘柄の製品は購入しなくなる。
こうした製品が生まれる訳とか、仕方なさとか、世の常と言うか、そうした事がわからないわけではないので、つまりこれは単に自分では手に負えなかった事への愚痴である。
ちなみに喜作の切り出し小刀の最初に購入した 1本は、それ以前に使っていたものより格段に良いと思っていたのだが、今回追加で購入した 3本は、もっと良かった。裏押しが限りなく平面であった。
全く以て作者が儲かっているのか心配になる。