日本の代表的な皮革製品ブランドで、それぞれがその一翼を担う GANZO、万双そしてWILDSWANS。この三つを比べる機会を得たので簡単にレビュー。
モノは名刺入れ。新品未使用。ついさっき軽くブラッシングし表皮のブルーム等を落としたばかりの状態である。写真左上が GANZOの THIN BRIDLE (シンブライドル)57189で色はネイビー。真ん中が万双のブライドル 名刺入れで、こちらも色はネイビーである。万双のネイビーは限りなくブラックに近い。ちょっとみ黒に見えるのだが、日の光の下で見ると間違いなくネイビーである。右下は WILDSWANSのアドラーで、先日 C.O.U.銀座店 7周年記念アイテムとして出されたオールドイングランドのブラックである。
内側はご覧の通り全く異なる。GANZOは伊国 Badalassi Carlo srlのミネルバ・ボックスのナチュラル。万双は相変わらずロゴさえ入っておらずシンプルの極み。ヌメ革である。WILDSWANSは、伊国 Conceria Walpierのブッテーロのグリーン。全てタンニン鞣しであり、それなりに経年変化する。ナチュラルカラーは汚れが付きやすく目立ちもするので手入れは必要。時々軽いブラッシングと、乾いた柔らかい布で汚れを落としてあげるのが吉。
糸目はGANZOは真っ直ぐ、万双は斜め、WILDSWANSはその中間。皮革とステッチの色が大きく異なる場合は、斜めのほうが見栄えが良い。
GANZOと万双にはネンが入っているが、GANZOは広く浅く。万双は深く狭い。GANZOは余りに浅いため、一部ネンが途切れてしまっている箇所があったり、、
全体を見回した限り、今回入手した名刺入れに限っては、縫製、コバ・ネンの仕上げ具合=(良)WILDSWANS = 万双 ⇒ GANZO(悪)。であった。ただし、皮革とステッチカラーが同色な GANZOは縫製が悪くとも目立たない。
GANZOが採用しているセジュウィック社製ブライドルレザーは、ブライドルレザーのデファクトスタンダードと言っても過言ではない。きめ細やかで、しなやかである。万双の小物に採用するブライドルレザーは、かなりバラツキがあり、どちらかと言うと粗く硬い。大抵の人は、GANZO(セジュウィック社製ブライドルレザー)の方を好むと思われる。
一方で、色が薄めで且つ表皮がきめ細やかな GANZOの名刺入れは、染料の浸透深度が浅いため、ややキズに弱い。例えば、コードバンなどは、繊維がとてもきめ細やかで且つ密なため、染料は表皮の浅い部分にしか浸透しない。そのため、使っていくうちに剥げてしまうことがある。
皮革製品は、黒に近い濃い色ほど染料が深く浸透している(逆に長時間あるいは何度も染色しないと真っ黒にならない)。したがって、その皮革の硬さとも相まって万双の名刺入れはキズに強く寿命も長い。
WILDSWANSの名刺入れにはクロム鞣しのボックスカーフが使われている。クロム鞣しの皮革は滅多に購入しない。のだが、先日、他の品を目的で銀座C.O.Uに立ち寄った際に触ってしまった、見てしまった。その日は購入せずにいたのだが、翌日になってその手触りが忘れられず(ry。
イギリスとその他の国でボックスカーフの名は意味合いが異なる。イタリア製でありながら、あえてオールドイングランドの名を冠している。ので、イギリス風のボックスカーフなのだろう。イギリス風のボックスカーフは黒がスタンダードカラー。クロム鞣しなので経年変化は少ない。柔らかくはなるだろうが、ブッテーロが裏に張ってあるので完成度の高い今の状態を長きに渡り保ってくれることを期待。
今回手に入れた名刺入れに限って言えば、皮革の質=(良)GANZO = WILDSWANS ⇒ 万双(悪)。であった。万双は明らかに粗くかさつき感がある。しかしながら、そのかさつきも一年程度使い込めば、ギラギラを経てテカテカとなっていく。じっくりと経年変化を味わいたい人は万双を、せっかちな人は GANZO、WILDSWANSを選ぶのが良い。のかも。
GANZOと万双は通しマチ。WILDSWANSはマチ無しである。マチがあるのと無いのでは、その収容力に大きな差が出る。
コバはそれぞれのブランドとしての特徴が出ている。GANZOは、赤味がかった半透明。万双は黒のつや消し。WILDSWANSは艶やかな黒で丸くRが掛けられている。
GANZOのコバは磨きが足りず、やや荒れている。GANZOにも万双にも WILDSWANSにも時々出来の悪い子がいるらしく、やはり革製品を購入するときは自分の目で確かめて購入するべきだと改めて思ってみたり。
GANZOの名刺入れに 40枚収容したときの状態。おろしたてでマチにはまだ硬さがあり、W型のマチは構造が複雑なため、すんなり綺麗に収納出来ない。しばし使い込めば柔らかくなり問題なくなる。はず。
W型に折り込んだマチは、3つのうちで最も広がり、最大で 70枚ほど収容出来る。ただし、50枚以上収容するとフラップが短く締まらなくなる。
万双の名刺入れに、こちらも 40枚収容したときの状態。余裕である。
GANZOほどマチは広がらないものの、フラップ長に余裕があるため、最大で60枚ほど収容出来る。ただし、その時の外観は、名刺入れと言うより、箱と化す。ライターは、フラップが閉じないように重しとして乗せてあるだけで、他に意味は無い、、
GANZOと万双名刺入れを重ね、マチ部分を拡大してみた。(中身は空っぽ)
ご覧の通り、GANZOのほうがマチ底部分の折り曲げが深く、且つ W型であるため大きく広がることがわかる。一方、フラップは万双のほうが長く余裕がある。
マチのある名刺入れは、収納する名刺枚数が少ないと、収納室が逆アーチ型に変形する。これを長く続けていると、当然の事ながら型崩れが起きる。GANZO、万双ともに最低 30枚は常時収納しておきたい。
皮革製品は、収納力に応じた適度な詰め物が必要で、もし常時その適量を維持出来ない時は、名刺サイズのプラスチック板をフラップ側の収納室に入れておくとある程度防止できる。(ホームセンターで数百円で販売している厚さ 0.75mm程度のポリプロピレン板がお勧め。はさみやカッターで切れる。)
先の2つと異なり、マチ無しであるため、その収容力もそれなりである。写真は 10枚収容したときの状態。これ以上入れると、名刺が痛む。取り出しも困難。フラップ側にも同様なカード室がある。トータルで 20枚が限界収容枚数。
サラリーマン必須アイテムである名刺入れ。なのだが、たかが名刺入れ。されどは無くて、やはりたかが名刺入れ。
万双の名刺入れは他 2つに比べほぼ半額で安価。それでいて丈夫で長く使える。GANZOのそれは皮革の品質に安心感がる。ある意味正統派。WILDSWANSは、他とは一風変わった個性ある製品。たかが名刺入れなので、どれを選んでも、ここに記載が無い名刺入れを選んでも良いと思う。
さて、自分は 2つ持つ派。一つはマチの無い薄いタイプで、こちらは上着の内ポケットへ。大抵はこれで事足りる。滅多にないが、大人数相手に名刺の交換をしなければならない時のためにマチ有り大容量タイプの名刺入れを鞄の中に。
と言うことで、しばらくは WILDSWANS+万双。気分転換に WILDSWANS+GANZOで往く予定。