8月後半から台風がいくつかやってきたためか、やたらと雨の日が多かった。気がする。そして何時の間にやらお彼岸。立秋から秋分までの間の暑さを残暑と呼ぶが、その残暑とももうすぐお別れ。この後は秋雨と秋晴れを繰り返しながら、木枯らしへと続く。
暑いと汗をかく。雨が降ると濡れる。体も濡れるし、持ち物も濡れる。濡れるとやたらと痛む持ち物の代表格が革鞄。なので、自分は秋分の日までは、ほとんど革鞄を持ち歩かない。そして毎年、この秋分の日の前後に、押入れから鞄を取り出し、使う前の点検とメンテナンスを行うのが慣例となっている。そして今年もその慣例に則り・・・ってはずだったのだが、昨日!何と!新たに通勤用の鞄を一個購入してしまった!
日本国内にも優良と呼ばれる鞄を製造しているメーカーが多数ある。吉田カバン、土屋鞄、GANZO、WILDSWANS、いたがき、そのほか色々、・・・この万双もその中の一社。
万双。あまり聞き慣れないメーカーである。それもそのはずで、デパートなどへは卸しておらず、販売はもっぱらネットと神戸にあるアトリエ、そして御徒町駅近くにある店舗のみ。革製品の専門店に行っても目にすることはまずない。また、普通の革製品には、ブランドを記した型押しや、タグなどが付いている。万双の製品にはそれもない。全くの無印である。例えば知り合いが持っているのを見ても、それが万双製とはわからないのである。
写真はその卸したての万双の双鞣和地 天ファスナーのブラック。置いてあるレンズキャップは、光の反射具合の比較用。
この鞄にはつい先日までは外国産皮革が使われていた。それがこの度国産に変わった。皮革の名は双鞣和地でタンナーがどこかは公開されていない。正直正体不明。購入直後は、ブライドルレザーの如く表面にワックスが浮いている。それをブラシで擦り、綿のクロスで拭っていくとチラチラと輝きだしてくる。さらに優しく拭っていくと表面にオイルが浮いてきてテカテカになってくる。どうやら、かなりの量のオイルを染み込ませている様子。今はまだマット感があるが、何となく使っていくうちにツルツルになっていきそう。この テカテカ + ツルツル になることが良いのか悪いのか。は、好みの問題。双鞣和地の皮革は、発売されて間もないため、その終焉がどのようになるかは未知数。これも楽しみ。
万双の鞄は、長い月日を掛けて経年と共に変化する革の表相や形を楽しむために、革好きな人達がよく購入すると聞く。そのような長い時間の使用に耐えうる堅牢な造りとなっているのだろう。価格は、製品の質からすると非常にリーズナブル。そのあたりもマニアックなファンを魅了している一因。ちなみに自分は革製品マニアではない。ので普段鞄を磨いたりはしない。使い始めと仕舞うときだけである。使い方はどちらかと言うと荒い。ズボラなのだ。
収納は3室。内装は黄色生地。鮮やかな黄色では無く、落ち着きのある黄色。汚れは目立ちやすい。形状・サイズからして、あまり多くの荷物は格納できない。より多くの荷物を収納したい人は、同じ万双のシモーネ シングル天ファスナーがお勧めである。縫製は内縫いで、丸みを帯びたその形状と相まって雰囲気はこの鞄とは全く異なる。
開口ファスナー長が短い割に、ファスナーはダブルとなっている。体の左右どちらにあっても開けやすい。ストレスの掛り易い個所なので、両サイドダブルステッチ。
肩掛けベルトは取り外し可能。ナスカン型ではない。ナスカンはワンタッチで付けたり外したり出来てとても便利。しかし如何せん強度的に不安が残る。以前ノートパソコンを入れた鞄のナスカンが壊れ、いきなり落下。衝撃で液晶パネルを割った苦い思い出がある。堅牢性から見たら、こちらが上。切れる前にチェックできる。ベルト幅は細身の 20mm。鞄本体がスリムなため、バランス的にはこの位が丁度良い。一般のスラックスズボンのベルト幅は 30mm。出っ張ったおなかを引き締めるのと、どちらが大きな張力が掛るのか比べたことはないが、多分、今使っているズボンのベルトのほうが寿命は短いと思われる。肩が当たる部分には、パットが付いている。
万双の社訓と言うか、はたまた掟と言うべきか。万双の革製品は被せ処理されていないヘリは、どんなものでも綺麗にコバが磨かれている。この肩掛けベルトも例に洩れず。
外周は”切れ目”ではなく薄い革で覆う”のせべり”。接着剤で革をしっかり張り合わされ、狭い間隔でステッチが掛けられている。とりあえず、めくれ上がりそうな個所は無さそう。がしかし、この鞄の最も弱い部分なので、定期的チェックは必要。
双鞣和地 天ファスナーは、角張った形状。このような鞄は、なるべく型崩れさせたくない。なので造ってみた。
ホームセンターでPP(ポリプロピレン)製の板の切れ端を購入(2枚分のサイズで500円もしないはず)し、鞄の外ポケットの形状に合わせカッターで切り抜く。基本、現物合わせとなるが、1枚当たり10分程度で完成。これを外ポケットに常時挿入しておくと、型崩れしにくくなる。使用した板の厚さは 0.75mm。変に膨らむことも無い。
かなり効果あるので、一度お試しあれ。
さて、実際の鞄としての使い勝手は、概ね不満は無い。挙げるとすれば、
- 外側のポケットの閉止めにマグネットが使われているが、これが若干弱い。ファスナーをあけ、鞄の取っ手を持ってその開口部を広げようとすると、マグネットが弱いため外側のポケット部が先に大きく開いてしまう。あとほんのもう少し強い磁力を持ったマグネットを使ってほしいものだ。ただし、これは使っていくうちに皮革が柔らかくなってくれば自然と解消されるのかもしれない。
- 鞄を地面に置いた際、底鋲が無いので、ヘリが直接当たり、傷ついてしまう。
程度であろうか。多くの不満点?を掲げても、実はそれら全てが不満点とは限らない。気付かぬうちにいつの間にか好みの問題にすり替わっていたりする。そしてその全てを改善?させたとしたら、それはもはや万双の双鞣和地 天ファスナーではなくなってしまう。ここでは使い勝手にのみに絞ってリストアップしてみた。重ねて言うが、概ね不満は無い。
さて、この万双の双鞣和地 天ファスナーシリーズには新色ネイビーが加わってくる。(8/20の時点でアメ横店舗には置いてあった)人柱求む・・・・・・・・。
万双の鞄は、一個購入し満足しつつも、もう一個欲しくなる。今現在シモーネ シングル天ファスナーを狙っているのだが、中々在庫に上がってこない、、。予約すれば良いのだが、出来あがってくるのを待つ間に心変わりする可能性は否定できない。う~~ん、悩ましくも踏み切れない。出来ることなら、ちらっと立ち寄った際に衝動買いさせてほしい。
光を反射する被写体を撮るのは難しい。本題とは全く関係ない話題であるが、ちょいと写真をアップ。
こちらは一番上の写真に対し、フォトショップの色調補正を使ってコントラストを下げたもの(設定値マイナス 50)。比べると、よりマット感漂う表相となっているのがわかる。
一方こちらは逆にコントラストを上げたもの(設定値プラス 100)。一番上の写真に対し、半端無いギラギラ感。
それぞれの写真単体で見ると違和感は無い。しかし、これらはこちらが感じた雰囲気を伝えるものではない。一番上の写真でさえも見て感じた雰囲気は表現出来ていない。逆に言えば、いかような雰囲気をも表現できてしまう。フォトショップで加工するまでもなく、光の当て具合、強さ、当てる角度によっては、同様な写真を撮ることが出来る。ネット上には様々な皮革製品の”エイジングを進ませた”写真がアップされているが、それを見て通販で購入してみて、「え”?」となることは珍しくない。革背品は実際に店舗に行って、新品と共に経年変化品を見て手にとって購入することをお勧めする。
いつか機会あれば、雰囲気を伝えるための動画を撮ってみようかな・・・。
<2015/11/21追記>
通勤に使い始めて 2ヶ月が経つ。使い始めは、ギラギラ感が半端無く、どうなることやらと心配していたのだが、段々と落ち着く傾向が見えてきた。
双鞣和地の表層面はかなり粗く、細かな凹凸が多数あり、凸一つ一つが独立している。凹も深く、エッジも鋭いので凸の表面ばかりが磨かれていくとギラギラになってしまう。また、銀面も硬いため、その輝きは鋭い。これはちょっと・・・。と思いつつも、使い続けて2ヶ月が経過した。凹凸の凸の部分が均されて、ギラギラ感はかなり低減してくれた。であっても、まだまだ深みのある輝きにはほど遠く、いましばらく掛かりそう。
てか、この皮革かなり手ごわい。どうしてくれようか、、
万双 シモーネ シングル天ファスナー を並べてみた。シモーネ シングル天ファスナーは、正味 1週間程度の使用。ほんのわずかだが、使い始めよりはツヤが出てきた。双鞣和地 天ファスナーに比べると、そのツヤは柔らかい。
<2015/11/28 さらに追記>
サクッと動画撮ってみた。一週間前にクリームを塗り、ついさっき軽いブラッシングでおめかし。ギラギラ、ツルツル、テカテカ、ヌルヌルが混ざったような輝き。エイジングの方向としては、ギラギラ⇒ギラテカ⇒ツルテカ⇒ヌルテカ今はまだギラテカとツルテカの間くらい。深みのあるツヤ、ヌルテカになるまではかなりの時間を要しそう。(動画撮影日:2015/11/28 1280 X 720 プログレッシブ ビットレート800kbps H264 ファイルサイズ 4MB)