電源ライン用ノイズフィルタボックス
別にノイズで困っているわけでもないのだけど、暇つぶしに電源ライン用ノイズフィルタボックスを作ってみた。
箱を買ってきて、穴をあけて、好みの長さのコードをを半分に切って、間にフィルタを入れるだけである。
写真のものは、負荷側よりコネクタと 2口コンセントの 2本を取り出し、計 3台の機器を接続できる。
TDKラムダの電源ライン用EMCフィルタ減衰量-周波数特性の比較
カタログ記載の製品バリエーションと主な特徴を抜粋したのが下の表。
今回、箱の中に組込んだフィルタは TDKラムダ製汎用低背高電圧パルス対応 RSEN-2016。
シリーズ名 | インダクタコア材料 | 段数 | 特性 | |
---|---|---|---|---|
周波数特性 | パルス減衰 | |||
RSEN | フェライト圧粉成形 | 1段 | 汎用 | × |
RSHN | フェライト圧粉成形 | 2段 | 広域高減衰 | × |
RSAN | アモルファス合金粉樹脂成型 | 1段 | 汎用 | 〇 |
RSMN | アモルファス合金粉樹脂成型 | 2段 | 広域高減衰 | 〇 |
RSKN | ナノクリスタル合金粉樹脂成型 | 2段 | 広域高減衰 | × |
ノイズフィルタは、内部に組み込む受動部品の組合せで周波数特性が、またその他の付帯機能は、ほぼ組み込むインダクタにより決定される。
表のシリーズのバリエーションは、インダクタコア材料と組込み個数の違いによるもの。
すなわち、フェライトに代わり、飽和磁束密度の高いアモルファス軟磁性粉をコア材料に使う事で、パルス減衰に対応した RSANと RSMN。
インダクタを 2つ組込み、フィルタ段数を 2段にすることで減衰量が大きくした RSHN、RSMN、そして RSKN。
RSKNには、ナノクリスタル軟磁性粉が使われているが、ナノクリスタル軟磁性粉の自分のイメージは低損失・低発熱。
携帯端末用途向けによく使われており、なぜこのサイズ、この形状のノイズフィルターに採用したのかイマイチ不明。
TDKラムダの公式サイトより、一部のノイズフィルタの減衰特性データが取得できる。
データが公開されている 3つのバリエーションのノイズフィルタの特性を比較しみた。
2段のノイズフィルタはコモンモードにおいて 2MHzを中心に、1段フィルタに比較してよく減衰させている。高減衰型と呼ばれる所以である。
と言うか、図中の周波数領域においては 2段フィルタの RSMN-2016が圧倒的じゃないか。
コモンモード減衰保証量(25デシベル) | |
---|---|
RSEN-2016 | 0.3MHz~20MHz |
RSAN-2016 | 0.8MHz~10MHz |
RSMN-2016 | 0.2MHz~30MHz |
2段のノイズフィルタはディファレンスモードにおいて 1MHz以下のノイズに対して優位で、この点を以て TDKラムダは広域型と呼んでいるのだと思う。
1段フィル同士の減衰量の差は、透磁率と飽和磁束密度に主眼を置くかの違い。高透磁率を持つフェライトの圧勝。
ただし、カタログ記載のディファレンシャルモード減衰保証量データは 25dB (0.3MHz~30MHz)とすべて同じ。
パルスノイズ対策としてRSEN-2016を選ぶ
カタログデータでズタボロであった RSAN-2016。
実は今どきの電気製品は、EMC規格(ノイズ規格)に則った設計が成されていて、よほど劣悪な環境(例えば、隣の金型屋が 24時間放電加工機をバリバリ稼働させているとか)でない限りノイズフィルタを取付ける必要は無い。
ただ、世の中には PSEマークが付されていない電気・電子機器が出回っていて、当然そうした機器は雑音の強さに関する試験はまともに実施していない。
油断は禁物。
そうした商品は買わない、使わないを徹底するが吉。
一方、PSEマークが付されている電気・電子機器でも、自らがノイズ発生源となる可能性が高い機器以外、本格的なパルスノイズ対策まで施してあるものは少ない。
今回は、このパルスノイズの減衰を狙って RSAN-2016を選定。
RSMNに比較してものすごく安価なことも一つの理由……いや、むしろそちらが主な理由……
ノイズフィルタを使うもう一つの目的は接続される機器の発熱低減。
PCの電源や ACアダプタ。スマホ用の充電器などなど、大型家電以外の電気機器の電源部分にはノイズ対策が施されている。
そうした対策部品はノイズを取り除いた分、発熱(ノイズを熱に変換)するわけであるが、これを事前に取り除くことで機器の発熱を提言することが出来るのだ。
もちろん前段に据え置いたノイズフィルタも発熱するのだが、ほぼ半永久的と言われる寿命を持つフィルタなので、惜しみなく発熱させてやろうではないか。
まあ、数多く設置してしまうと、ノイズの一部はアース側に逃がしているため、それを漏れ電流の一部と見なされ漏電ブレーカーが動作してしまう可能性は否定できない。余程数多く設置しなければ基本的にデメリットが無いパーツなので、こうした可搬型のフィルターボックスはどこかで役に立つはず。