ペンチなのかラジオペンチなのか
写真の上がペンチ。下がラジオペンチ。そして真ん中がクニペックス のニードルノーズペンチ。
国内の一部のメーカーでは、精密作業用途として、これに似た形のショートノーズラジオペンチや、万能ペンチと言う名の工具が発売されている。
このクニペックス のニードルノーズペンチはそれらよりもペンチに近い。型式は 0826-145。
一見、便利で普及しそうにも見えるが、独立したカテゴリまでには至っていない。
やはり中途半端な形と思う人の数は少なくないのだろう。
様々な工夫が施されたノーズ
実はこのクニペックス のニードルノーズペンチの細部を観察していくと、その先端部には様々な工夫が施されていていることが確認でき、
ラジオペンチとも、ペンチとも異なる作業が行えたりもする。
凹凸が綺麗に嚙み合わさる先端掴み部
ラジオペンチもペンチも、そのアゴ部分は掴みと切断の両方の機能を持たせるのが一般的。
ただし、この 2つの機能を精度よく同時に機能させるのはとても難しい。
工具メーカーは、握り込んだ時に掴み面の隙間をゼロとするのか、切断刃の隙間をゼロとするかのいずれかの選択に迫られる。
このクニペックス のニードルノーズペンチの場合、切断刃の隙間がゼロとなるよう設計されている。
掴み面の隙間をどうしているかと言うと、写真の通り鋸歯状の凹凸を綺麗に嚙み合わさるよう加工され、実質隙間ゼロとなり、掴みと切断の両立が図られている。
三点支持で確実に掴持
厚さ 3mmの平ヤスリを挟み掴んだ写真。
青色矢印の面が平坦であるのに対し、赤色矢印側は湾曲している。
したがって、青色矢印の平面部にワークが赤色矢印側の線接触で押し付けられる。
3点支持である。
一般的なラジオペンチやペンチでは、平板や長い角棒を縦に挟み込むと、ワークがお辞儀してしまうが、この工夫によりその現象を低減できるのだ
こうした形で掴めるワークの最大厚さは 約6㎜。
また、凹凸の先端は尖っておらず、ワークにも優しい。
切断刃は実用的な嚙み合せ
ノーズの下に赤色平板 LED照明を置き、上から切断刃を覗いてみた。
クニペックスの工具の中で、ラジオペンチは閉じた際に先端の鋏み部が先に当たり、切断刃はほんのわずか隙間が空く。
一方、ペンチは切断刃が先に当たり、鋏み部の先端にわずかな隙間が生じる。
やはり、このニードルノーズペンチはクニペックスの中ではペンチのカテゴリに分類されるのであろう。
光がかなり漏れているように見えるが、極標準的なもの。
カタログデータに記載されている切断能力は、最大16.0 ㎟のより線銅線、最大φ 3.0 ㎜の中硬線(釘)、最大φ 2.0 ㎜の硬線(ワイヤーロープ)。
よく切れる。
絶縁コンフォートグリップの握り心地
クニペックス のニードルノーズペンチのグリップは、プラスチックコーティングとコンフォートグリップ。そしてここで取り扱った絶縁コンフォートグリップの 3種から選べる。
絶縁コンフォートグリップは本来、活線工事の安全対策の一つとして用いられるものだが、その握り心地を好んで、敢えて選択する人も多い。
グリップの選択は専ら好みの問題なので、語ることは少ない。目立つ色とコンフォートグリップと同等な握り心地を求める人には悪くない選択だと思う。
価格も理由はわからないが、プラスチックコーティングやコンフォートグリップよりも安価な時がある。