面接触ソケットの色々
六角ボルト・六角ナットの締緩工具であるソケットは、今やほとんどが面接触タイプとなっているらしい。
ほとんど……らしい……と言ったのは、面接触タイプ以外のソケットを見たことが無いので、今どきのソケットはもしかしたら全てがそうなのかもしれないから。
面接触タイプのソケットの内側は、六角ボルトや六角ナットの角の部分に接触することなく平面部分に接触するような形状となっていて、また、単純に六角ボルトや六角ナットの側面に接点を移しただけではなく、ソケット側の接触部に平面部を設け、より高いトルクをでボルトやナットに掛けられるようになっているのが特徴。
こうした優れた特性を持つ面接触タイプのソケットは、スナップオン社の「フランクドライブ・レンチシステム」にはじまり、特許が切れた1980年代以降、工具メーカー各社が商品化している。手元にあるソケットでは表の通り独自の名称が掲げられている。
メーカー | 名称 |
---|---|
Snap-on | フランクドライブ |
ko-ken | フラットドライブ、サーフェイスドライブ |
KTC | パワーフィット |
Tone | ストロングドライブ |
実際にソケットの内面がどのようにボルトやナットに接触しているのか、とても興味があったので、ソケットにナットを差し込んだ状態を写真に撮ってみた。
なお、ナットは刺し込んだだけで、締め方向あるいは緩め方向に力を加えているわけではないので、当たり箇所・当たり具合の判別は難しいかもしれない。
カメラはパナソニックのマイクロフォーサーズデジタル一眼カメラ DC-GX7MK3で、レンズはモリテックスのテレセントリック系等倍レンズ。同軸照明とリング照明を併用した。
各写真ともトリミングはせず、若干のコントラストとホワイトバランスのみの調整を行った。
なので、ここに掲載した写真は全て縦 13mm 横 17.2mmのスケールサイズとなっている。
撮影対象のソケットは、各社とも差込角 9.5mm(3/8″)、二面幅 10mmを使い、M6のナットを挿入し撮影した。
最初に書いておくが、今回取り扱ったソケットにはそれぞれ特徴があるものの、コーケンのサーフェイスドライブソケット以外、厳密に使い分けているものではないのが実情で、そもそも実際に手に取ってボルトやナットを締緩しても明確な差を感じることは稀なのだ。今回取り扱ったソケットは甲乙助難いものと感じている。
拡大写真を見てわかった事と言えば、メーカーそれぞれ独自の工夫を施している事。
どのソケットも優秀なものだったこと。
また、6角ソケットと 12角ソケットで比較されることがよくあるが、角数ではなく、ボルトやナットへの当たり方(面への接触の仕方)の違いのほうが遥かに影響が大きいことがうかがえた。
六角タイプの面接触ソケット
こちらはコーケン フラットドライブ 3/8(9.5mm)SQ. 10mm 6角ソケット。
ボルトやナットの角にソケット内側が当たることは無く、しっかりとソケット内面でボルトやナットを包んでくれる。
下の Toneのソケットに比較し、若干の遊びがあり、舐めかかったボルトやナットのうち、それが軽傷であれば締緩出来そうである。
とてもバランスの取れたソケットで、自分はエクストラディープでこちらを使っている。
こちらはトネ ストロングドライブ 3/8(9.5mm)SQ. 10mm 6角ソケット。
コーケンに比べ、遊びは少ない。
そのため、変形しているボルトやナットは挿入が難しい場合もありそう。一方、ボルトやナットへの攻撃性が低く、傷や変形が無い新品もしくは比較的新しいボルトやナットの締緩に向いている。
また、ソケットの肉厚も今回取り上げた中では最も厚い。
トネのソケットは、今回撮影に供したソケットメーカー中では最も安価で、それでいてしっかりとした作りなので、自分の購入頻度は高い。
シャローとディープに使っている。
コーケンは、標準品であるフラットドライブの他、極端に面接触寄りにしたサーフェイスドライブソケットを商品化している。
ボルトやナットの側面の平らな部分の、より中心付近に接触するよう設計され、舐めて角がほとんど取れてしまったボルトやナットでも締緩出来る場合がある。
ただし、遊びが極端に大きいため通常使用には向いていない。自分は緊急用に確保している。
十二角タイプの面接触ソケット
元祖面接触ソケットのスナップオン フランクドライブ 3/8(9.5mm)SQ. 12角ソケット 10mm。
ソケット内面は、綺麗なサインカーブを描いている。遊びは次の 2つに比較し多めである。肉厚は最も薄い。
ほとんどのメーカーは、このスナップオンのフランクドライブを真似て、さらには追いつき追い越そうとしてきた。
未だに使い勝手と使い心地はトップクラスである。
KTC パワーフィット 3/8(9.5mm)SQ. 12角ソケット 10mm。
スナップオンに比較し、ソケット内側の凹凸の角は鋭角である。
ボルトやナットの側面の平らな部分のより中心に近い箇所に接触することとなり、力を効率的に掛けることが出来る。
一方、ボルトやナットへの攻撃性は高そうである。
コーケン フラットドライブ 3/8(9.5mm)SQ. 12角ソケット 10mm。
KTCはもとより、スナップオンに比較し、ソケットの接触箇所はボルト・ナットの角に近い箇所となる。
ソケット内面の曲線の振幅は小さめで、ボルトやナットへの攻撃性は少なく思える。
一方、舐めかかったボルトやナットの締緩には、他の 2つに比較してやや苦手なのではなかろうか。
拡大してあらためて形状を確認してみて感じたのは、それぞれメーカー毎に一長一短が存在すること。
このメーカーのソケットで回すことができたけど、あっちのメーカーのソケットでは回せなかった。だから、このメーカーのソケットのほうが優れている。
とは言い切れない。
多分、そんなのは偶々である。偶然そのメーカーのソケット形状に合った形にボルトやナットが変形していただけである。