KIRA のボール盤に続いて入手したのがこれ。ナベヤ製のリードバイス。KIRA のボール盤の購入以来、すっかり made in Japan の虜になってしまった。日本人であり、ずっと日本に住んでいながら、今頃その良さに気付くなんて……
田端の中古機械販売店に在庫状況を聞いてみる
東京都北区の田端には、中古機械店が沢山並んでいて、時々ウインドウショッピングする。バイスなどは、大抵の中古機械店にはわんさかと在庫があるのだが、まずは以前ボール盤購入でお世話になった有限会社中澤機械店に電話で在庫状況を確認してみた。口幅100mm~150mmまで、数台在庫があるとのこと。早速現地に。
確かに、沢山ある。が、その中でもひときわデカく、ゴッツイのが・・・・
ナベヤ(1560年”現在2013年なので453年前”から鋳物を造り続けてきた会社です)の丸胴形リードバイスだ。リードバイスには、丸胴形と角胴形の2種があって、前者のほうが、色々な部分で強度、締め付け力、そして精度が高いらしい。
引き寄せて、手で持ち上げてみる。なんとか一人で抱えられる重さだ。口金を目一杯広げて、アゴを取り外してみたり、中のネジ部分を観察してみたり。特に致命的な不具合は無いようだ。
基本設計が変わっていない昔からある機械や工具を中古で購入するときは、製造年月日や外観で判断してはいけない。錆も芯まで達しているような深いものでなければ全く問題無い。汚れもしかり。機能を司る基本部分に不具合が無ければ、あとは何とかなるものだ。
逆に、再塗装がされている機械は見極めが難しい。中にはケレンもせずに錆の上から塗装されて、将来その修復にとてつもなく煩雑な作業を強いられる場合もある。
ちなみにナベヤの丸胴形リードバイスには JIS型とアプライト型の二つの種類がある。今回購入したのは、廉価版のアプライト型。
ほぼ衝動買い。家に持ち帰り、汚れと錆を何とかすることにした。
まずは分解して各部をチェック
手回しハンドルをどんどん緩めていくと、駆動側のアゴがはずれる。雄ねじにはグリスがタップリと塗られていて、錆は無し。若干切り子らしきものが付着している。多分、このバイスを使って金属を糸鋸で切ったり、あるいはドリルで穴開け作業をした際に切粉が軸側に飛び散っていったのだろう。口金横のキズは糸鋸もしくはグラインダーの痕か。
底面側から見たところ。
こちらにも切り子が。多分、掃除するときエアを吹いて、底面から侵入したものと思われる。全く問題無い。カラーを固定しているネジを外せば、スピンドルを引き抜ける。
固定側のアゴ。こちらもグリスタップリ。錆も無くかなり良品。
雌ネジは、後ろの3つのネジを外せば引き抜くことが出来る。
このおしり側の平坦部分は、アンピルとして使えると聞く。本当だろうか?
鋳物だし、割れたら恐いし、どうしてもそのような用途に使う気になれない。
洗浄・汚れ落とし
まずは、グラインダーにカップブラシを取り付け、大まかな汚れを落とす。続いて、灯油とワイヤーブラシを使って汚れ落とし。脱脂。
汚れ落としを頑張りすぎて、オリジナル塗料まで一部剥がしてしまった……
こちらも然り。オリジナルな塗装はなるべくなら維持したかったのだが、ここまで剥がしてしまうとやはり再塗装が必要か。キシレンか MEK 使って全部剥がしてしまおうかとも考えたが、頑固そうに付着しているので、このままの状態で上塗り再塗装することにした。何より、あっち系の溶剤使うと2日酔い並に翌日頭が痛くなるし……
てかこの写真、丸胴形たる所以がよくわかる。
その他の部品。実は重要部品。径25mmの台形ネジはとても綺麗。まだエッジが立っていて、触ると指が切れそう。下の筒は内側に雌ネジが切ってあり、そのネジ部も長い。この雌ネジ部の材質は、頑丈なダクタイル鋳鉄(FCD600)製。遊びが無く、頼りがいのある強い締付け力は、このような所から来ているのだろう。
再塗装で防錆
さて、まずは下塗り。たまたまベランダの手摺りを塗装するためにストックしていた塗料があったので、それを活用。日本ペイント 1液ハイポンファインデクロ 赤さび色である。
エポキシ系錆止め塗料。ザラザラでもなく、ツルツルでもなく、サラサラ的な表面に仕上がる。この後塗る上塗り塗料としっかりと密着してくれる。基本的に鋳肌部分を塗装。機械加工部分は無塗装とした。また、内側は塗ることが出来ないので、組み立てる際に防錆剤とグリス塗布で対処。
次に上塗り。手摺り塗装用に準備していたため、色は黒・・・。日本ペイント 1液ファインウレタンU100ブラック。1液のウレタン塗料では最高峰の防錆性能を誇る。
ただ、工作機械用の塗料ではないため、耐油性とか耐衝撃性などはそれほど期待できない。が、防錆性能は遙か上を行く。おまけに屋外用なので直射日光や風雨など、ものともしない耐候性は言わずもがな。まあ、雨など決して当たらない場所で使うから意味はないけど(笑
ただ、こんな手間掛けた塗装よりも、シンプルな水性塗料一回塗りにしておけば良かったと若干後悔。タッチアップ楽だし、刷毛も水で洗えるし。
摺動部にグリスをタップリ塗りつけ、防錆剤を内部に吹き付け組立。まあ、なんとか完成
※対象が真っ黒で写真撮影が難しかったので、ナベヤのマーク部分とか、125の数字部分はPhotoshopで覆い焼きして無理矢理表示させています。実際の色は、紛れもなく、ものすごい真っ黒でツルテカ。
分解整備の勧め
中古品を手に入れたら、一度全部バラしてみることをお勧めする。
不具合箇所の発見のみならず、目で直接見ながら構造を把握出来るため、どんな使い方をすれば無理が掛かるのか、どのような使い方を想定して設計しているのかがある程度掴める。
日頃のメンテナンスにおいて、どの部分に、どの程度の量のグリスを塗布すれば良いかも。また、将来再び分解したときに、経年劣化による消耗度合いがわかるようになる。バイスは、簡単な構造で誰にでも分解出来るので是非中古品を購入された際は行って欲しい。
して、使い心地は………
手回しハンドルを回すと、音もなくスルスルとアゴが前後してくれます。ワークを挟んで締め付けても、アゴが斜めになることなく、水平に掴んでくれます。
試しに、SPF材の切れ端を挟んで目一杯圧縮してみたら、ギシギシと音を立てながら、木材が薄くなっていきます。取り外して木材切れ端を見てみると、圧縮面の両側が平行。ホームセンターで売っているバイスだと、こうは行きませんね。信頼できる道具が、また一つ増えました。
リードバイス(万力)を設置する台
<2017-03-11追記>東日本大震災でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
このリードバイス(万力)を設置している台は、ホームセンターで安く売っていた踏み台を利用している。ただし、踏み台そのものだと、強度的に難があるため、天板も含め何カ所か補強を施している。
この設置台も、リードバイスを購入した時に、使いはじめたものであるが、こちらもガタなど発生せずまだしばらくは使っていけそうである。
なお、塗装は防腐剤入りの水性塗料を使った。
整備後3年半が経過した
<2017-03-11追記>さて、中古で手に入れ、整備してから 3年半が経過した。
かなり雑に扱ってきたが、不具合もなく、壊れる気配もない。塗装には若干キズ付いているが、下塗りの錆止めが剥がれるまでには至っておらず、当然塗装した面に錆など発生していない。つまり外観上は特に問題ないのだ。
ただ、とは言っても、摺動部があるので、定期的なメンテナンスは必要である。
再び整備
整備は、錆のチェックとグリスアップだけである。
この 2点さえやっておけば、数十年は使える代物。他に注意すべき事は、切りくずの除去だろうか。ネジ部やガイドに切りくずが取り付くと、噛み込みにより痛めるだけでなく、放置すれば錆の発生を招く。
今回はチェックしたところ、グリスの変色も起こしておらず、ネジ部の摩耗も見られなかった。ネジ部に塗られたグリスが黒っぽく変色していた場合、それは何らかの原因で、ネジ部が摩耗しているためである。その場合は、分解し、もとのグリスを綺麗に拭き取り、新たに新しいグリスを塗布することとなる。
手回しハンドルの付け根には、ニップルが付いていて、ここにはグリスガンを使って注入する。中に、オイルシール等は組み込まれていないので、多少多めに注入しても壊れることはない。
最後に、水置換性防錆剤で錆止めを吹きつけ完了となる。写真の防錆剤は、イチネンケミカルズ(旧タイホーコーザイ) のラスジェット。 防錆能力は中々の性能。ただし、最終的には乾くものの、吹き付けた直後はやたらとベタベタする。なので、風のある屋外で作業するときは、ホコリの付着が半端無い。
この一本が無くなったら、代替品を探す旅に出る予定。より良い防錆剤をご存じの方がいたら是非とも紹介して欲しい。
バイスの分解拝見しました
最近ナベヤの万力ヤフオクで購入しました。
よくぴかぴかに磨いておられますが
リューターにペーパーお付けて磨けばいいのですか
インパクトドライバーでは駄目ですか
回転数が低いですからリューターが要りますかね
バイスですがそのままハンドルを緩めれば本体側と外れるのでしようか?
解体方法がいまいち解りません
それと、今125ですが150が欲しいと思いますが
ただなんとなくですが必要ありますかね。
素人で申し訳ありません質問しまして
よければ回答の方よろしくお願いします。
失礼します。
当サイトにおいでいただき有り難うございます。
ご質問の件で、お答えできる範囲で書き込みます。
>最近ナベヤの万力ヤフオクで購入しました。
>よくぴかぴかに磨いておられますが
>リューターにペーパーお付けて磨けばいいのですか
>インパクトドライバーでは駄目ですか
自分の場合は、グラインダーにカップブラシで大まかな汚れを落とし、取り切れなかった油分を灯油で洗浄しました。ただ、磨いたつもりはなく、大ざっぱに汚れを落とした程度との認識です。本当は、元々の塗装は剥がしたくなかったのですが、思わず力が入ってしまって一部剥げてしまいました。
リューター + ペーバーだと一度に研削出来る面積が小さいのでそれなりの時間と根気が必要になると思われます。
インパクトドライバーは、あくまでドライバーなので、研削には向いていません。無理に使うと、チャックや軸等を痛める可能性があるのでお勧めしません。
>バイスですがそのままハンドルを緩めれば本体側と外れるのでしようか?
ハンドルを緩めていけばはずれます。
>今125ですが150が欲しいと思いますが
>ただなんとなくですが必要ありますかね。
万力は大は小を兼ねる道具らしいです。必要があるかどうかは、設置場所、対象となるワークの大きさ、それとフトコロの●具合でお決めいただくのがよろしいかと思います。それと150クラスだとモノによっては一人では持てません。
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・・・・良きDiyライフを
ナベヤの丸胴型JISバイスを使ってます。
このクラスのバイスを一度使ってしまうと、ホームセンターで売ってるような奴には戻れませんね。
家のも、ここで分解整備しているものとほとんど同じ構造ですが、あるところまでアゴを開くとストッパーが当たって止まるようになっています。開き側のアゴを支える部分の端に、ネジ止めされた板があり、そこにアゴが当たってとまります。(ネジをはずしてストッパーを取れば、アゴを抜くことができます)
回答ありがとうございました
参考にさせていただきます
バイスがかなり色落ちしていますので
色を変えたいと思いますが
灯油で洗ってその後
水生ペンキて地下塗りでいいですかね
水性より油性の方が良いのではないですか?
刷毛塗りでいいですか?
塗り直しの手間を惜しまないのであれば水性
最初の塗装に手間を掛けられるのであれば油性でしょうか
厚塗り上等な刷毛でよいかと思います