KIRA ボール盤 KND-8 の電動機ベアリング交換

投稿者: | 2013/10/07

キラ・コーポレーションの小型ボール盤 KND-8 が販売終了

ボール盤銘板

1965年から48年間、ほぼ半世紀に渡り造り続けられてきた、キラ・コーポレーションの KND-8 が販売終了(2013年10月)した。

かく言う自分は、つい先日このモデルの中古品を手に入れたばかりである。

それ以前は、made in 某国の某国内メーカーブランドのボール盤を使っていたのだが、プロ用と記載されてはいるものの、どう考えても仕事には使えない代物。
まあ、プロのノウハウとテクニックを駆使すれば、そこそこの穴をあけられるのかも知れない。そう言う意味では、確かにプロ用。何しろ穴をあける際、ワークを押さえる以前にボール盤本体を押さえる必要があった(笑

仕事どころか、一般家庭用でも厳しい。某国製、某国内メーカーブランドのボール盤がこんな出来の具合であった為、リプレース。
最新のものから古いものへとリプレースなど、PCの世界じゃ考えられない。

中古の機械を購入するのは久々であった。ネットのオークションを利用することも考えたが、購入してまともに動かなかった場合、その粗大ゴミの処分にも困るので、今回は中古機械販売店にて購入した。中古機械販売店だと、その場で動作確認出来るし、商品によっては、どんな企業が、どのような目的で、どのように使われてきたかを聞くことも出来ちゃう。

さて、現物が到着し、しばらく使っていたのだが、どうも駆動系から異音を発しているようだ。新品と中古機械を並べて、その動作音を聞くのなら兎も角、大抵、その音が問題のある音なのか、正常な音なのかは最初は判別が付かない。しばらく使っていくうちに、その違いがわかるようになって来る。そして、それが今来た。
さて、その原因となる部位は……

穴開け作業している、していないに関わらず、「シャーーーーーッ」っと聞こえる。ネコが怒ってる時の声の音。耳をボール盤に近づけていくと、どうやら、電動機付近。ベルト張力を調整すると、音質が変化する。モーターのベアリングからの異音だ。

と言うことで、ボール盤 KND-8 のモーターベアリング交換を行ってみた。

まずは電動機の取り外しから

電動機プーリーVベルトを取り外し、プーリーの横に空いている穴から六角レンチを挿入し、六角止めネジをはずす。

モーター側は、プーリーの高さ調整を行う必要があることから、このような構造になっている。従って、モーター側プーリーはプーラーを用いずとも、よほど錆で酷く固着してなければ、手で持ち上げるだけで外せる・・・はず。

一方、主軸側は特にイモネジで固定されているわけではなく、大きなナットが単にネジ止めされているだけである。
逆に言えば、この大きなナットは時々締め具合をチェックしなければならない。いつの間にか外れて、プーリーボックスの中で暴れているときがあった。

電動機端子箱次はこれ。モーターの端子箱への電源ケーブル。

モーターは、三菱電機製 SP-KS 200W 4P 100V 家庭用コンセントからそのまま電源を供給出来る。○○ワットと表示されているのを見ると、ワットチェッカーを接続して実消費電力を計りたくなる・・・。省電力PCを組んできた癖がまた、、

(2013/10/29追記)

っで、やっぱり気になったので計測してみた(笑)。以下消費電力はワットチェッカー読み。

  • Vベルトを外し、電動機単体で回したとき:138W
  • Vベルトを低速側プーリーに掛け回したとき:145W
  • 同じく、中速側に掛け回したとき:156W
  • 同様に、高速側に掛け回したとき:172W

最も負荷の高い高速側プーリーにベルトを掛けた状態での起動時の消費電力は軽く1500Wを超える(ワットチェッカーから1500Wもしくは15A超えの警告音が鳴った)。分相始動なので高め。同じ室内配線で、他に電気を使っている機器があるときは注意が必要。また、ほぼ無負荷なのに消費電力高い?と思われるかも知れないが、銘板に書かれている電動機出力 200Wは軸出力。効率や力率を加味すればこんなもの。(追記終わり)

電動機端子箱端子箱のカバーを外すと、端子台が並んでいる。端子台から、ボール盤本体から来ている2本の端子を外す。

負荷側ブラケットモーターベースを固定しいる4本のボルトを取り外す。これで、本体からのモーター分離は完了。

反負荷側ブラケット取り外したモーターを反負荷側から見たところ。

周囲4カ所に鍋ネジが確認出来る。このネジは、負荷側ブラケットまでモーター内部を貫通している。

電動機の外観と中身をチェック

負荷側ブラケット取り外したモーターを負荷側から見たところ。

周囲4カ所にナットが確認出来る。注意するべき点は、ステーター鋼板フレームと前後のブラケットを組み付けるときは、分解する以前と同じ位置にすること。ブラケットは90°毎に位置を変更できるが、下手に位置を変えると、場合によってはうなり音を発する。ステーター鋼板スレームと、ブラケットは馴染みが必要なのだ。サインペンなどで合いマークを付けることを推奨。

ブラケットのネジをプラスドライバーとメガネレンチを用いて外せば、ローターを引き抜くことが出来る。ネジを外したにもかかわらず、ブラケットがステーター鋼板フレームから手で外せないときは、ブラケット周囲を軽くプラスチックハンマーで叩いてあげる。

単相電動機起動ユニット反負荷側ブラケットを取り外したところ。

単相モーター特有の起動ユニットが組み込まれている。このユニットがある分、三相モーターより高価なのだ。起動ユニットに異常は無さそうなので、このまま取り付けたままにする。このタイプのモーターは、反負荷側からローターを引き抜くことは出来ない。

ステーター負荷側ブラケットを取り外し、ローターを引き抜いたところ。ステーター鉄心とコイルが確認出来る。

手で触ると、ホコリが取れて綺麗なエナメル線が出現。ホコリは貯まっているが、この程度ならエアで吹くだけで充分。ちなみに、負荷側ブラケットのベアリング装着箇所には軸スラスト方向に効くリング状のばねが装着されている。小さな部品なので紛失に注意。

取り外した電動機回転子取り外したローター。
積層鉄心部分が何やら緑色の樹脂のようなものでコーティングされている。多分、錆止め。溶剤等で洗浄すると、コーティングが剥離するので注意。

ベアリングを手で回してみると、シャリシャリ感が……特に反負荷側には、一部引っかかり箇所まである。玉どころか、リングにも傷が出来ているようだ。ベアリングをバラしてみたいが、カシメてあるタイプなので分解不能、、。そのうち、シャリシャリが、ゴリゴリになって、さらにそのまま運転し続けると焼き付いて、軸の損傷に至る・・・・。

ベアリングの取り外しと組み付け

プーラーでベアリング取り外しベアリングはプーラーで引き抜く。

径が小さいので、ハンドルは素手で回せる。

  • 負荷側:6202ZZ、内径12mm、外径32mm
  • 反負荷側:6201ZZ、内径15mm、外径35mm

サイズに合ったプーラーを選択。プーラーとモーター軸が接触する端面にグリスをわずかでも塗っておくと、プーラーに優しい。

プーラーでベアリング取り外しさて、いよいよベアリングの組み付け。

今回、負荷側ベアリングの圧入には水道用塩ビパイプを活用した。軸が挿入出来るサイズで、可能な限り内径の小さな塩ビパイプを適当な長さに切断。塩ビパイプに軸を挿入しプラスチックハンマーで叩く。軸径=ベアリング内径=15mm なので、呼び径16の塩ビパイプを使用。

反負荷側ベアリングは、軸が突き出ていないので、適当な木片をベアリングに当て、その上からプラスチックハンマーで叩いて装着。交換したベアリングは、モーター銘板に記載されている 6201ZZ と、6202ZZ。一つ200円チョイでした。

分解した電動機パーツそれぞれの部品を洗浄し、後は分解した逆の手順で組み付けて完了。

準備、後片付け、部品洗浄を除けば、正味1時間も掛からない作業。ちなみに、自分は、メガネレンチとプーラーの家宅捜査に2時間掛かった……
ああ、もっと大きな物置がほしい!

さて、ベアリングの交換が完了したので、ボール盤本体に組み付け、まずはモーター単体で試運転。

超~~~静か!。次に、Vベルトを掛け、調整し、ボール盤主軸を駆動。これまた超~~~静か!

ところが、モーターベアリングの異音が無くなった為か、今度は主軸付近からの異音に気付いてしまった。PC のファン交換での静音スパイラルをボール盤で経験するとは(笑)。

そのうち、全ての部品バラして、完全オーバーホールするかな、、

某国製、某国内メーカーブランドのボール盤から KND-8 に換えてみて、その違いには驚いた。ここまで違うとは・・・。裁縫針をチャックに取り付け、高速回転させても、その先端に一切のブレも無い。チャックを持って、前後左右に揺すっても、微塵のガタも無い。

KND-8 の製造販売終了は誠に残念。それだけ、小さな町工場が少なくなっているのだろう。このサイズは、家で使うのにすごく重宝する。重さも 33kg で、一人で持ち運び出来、穴開け精度はお墨付き。新品はさすがに高くて手が出ないが、中古なら、ホームセンターで販売されている某国製、某国内メーカーブランドのボール盤と変わらない価格。

中古なので、手を掛ける必要がある部分も見つかるかも知れないが、致命的でさえなければ、部品代はたかが知れてる。(今回交換したベアリングは2つで500円未満)。基本がしっかりしているので、メンテナンスさえしてあげれば、充分な精度が出る。ホームセンターで某国、某国内メーカーブランドのボール盤を買うより、中古国産メーカー製!お勧め!

ああ~、日本の物作りの凄さはこう言うところから来てるんだなと、物思いにふけれます(笑


今回ボール盤を購入したお店は東京都北区田端新町にある有限会社中澤機械店さん。
店の中は、所狭しと工作機械が並び 、ボール盤の在庫も豊富。KIRAだけではなく、アシナ、日立などなど、色々展示されている。部材とキリを持って行けば、穴穿け加工してでの動作確認もその場で可能。

対応いただいたお店の方は、2代目もしくは3代目さん?なのかな?工作機械の昔話を沢山していただいた。いつまでも話を聞きたかったが、仕事の邪魔になりそうので途中で切り上げた。

自分の場合、翌日無料でみずから家まで配送していただいた。近所の方は交渉してみては?。明治通り沿いのこのエリアには、中古機械販売店がまだまだ残っていて、中古機械巡りが出来る。最近、秋葉原同様、ウインドウショッピングがてら時々彷徨っている(笑

<以下 2017/11/16追記>

ボール盤を扱う上での注意事項

労働安全衛生規則第111条には、

「ボール盤、面取り盤等の回転する刃物に作業中の労働者の手が巻き込まれるおそれのあるときは、当該労働者に手袋を使用させてはならない」
との記載がある。

これは意外と知られてないこと。

また、切り屑を掃除する際は、ボール盤のキリを完全に停止させた後、手袋を着用し行うのが正しい作業の仕方である。






KIRA ボール盤 KND-8 の電動機ベアリング交換」への7件のフィードバック

  1. 匿名

    ボール盤が欲しくてヤフオクで KND-8中古をポチる前にこのHPを参考にさせていただきました。
    届いたボール盤は油汚れ、誇りはすごかったですが磨いてみますと錆は意外となくモーター音も静か。
    回転数も計測しますと表示通り、これから塗装しまして組立し活躍しそうです。
    ありがとうございました。

    返信
    1. futsutsuka

      コメントありがとうございます。

      ———————–
      自分のコイツは購入して3年半が経過します。
      モーターと本体のベアリング交換、チャックとベルトの交換(共に購入して即交換)以降、何もメンテしてません(汗
      多分、数千発の穴をあけましたが、ガタや異音もなく、元気に動作してくれており、今では、最も信頼出来る道具の一つとなっています。
      ———————–
      自分で塗装やらメンテをしますと、中古とは言えもの凄く愛着が沸いちゃいますので、ほどほどに、、
      そして、良きDIYライフを・・・。

      返信
  2. 通りすがりの名無し

    いいですねえ。ボール盤。私は工業系の大学生ですが、欲しいと思うことがたびたびありました。確かに中古で買おうと思えば買えなくはない(金銭的に)ですが、買ったところで何に使うのか、というのが思いつきませんw。まあ単純にボール盤とか旋盤とかそのような機械が好き、ということでしょうかねぇ。
    どうも、ちょっとコメントさせていただきました。くだらないコメントですいません(汗)。

    返信
    1. futsutsuka

      コメントありがとうございます。

      機械工学系の大学を出て、就職先がその道ではなかった方々は、何年か経つと旋盤・フライス盤が懐かしくなって来るそうです。金銭的にもスペース的にも購入出来る工作機械?がボール盤らしく、実際に買われた人を知っています。

      言われます通り、何を作るわけでもなく、時々電源を入れて回すだけのオブジェと化しているらしいです。
      その怪しげな行いを、何となく理解出来る自分も機械好きの一人です。

      また、機会がありましたらお立ち寄りください。

      返信
  3. SOULMAN

    初めまして。突然のメッセージ失礼します。
    最近、ホームセンターモデルからKND-8に乗り換えました。
    古い機械をメンテナンスすることもDIYの一環なので調べていたところ貴兄のHPに辿り着きました。
    非常に参考になる情報がたくさんあって、とりあえず洗浄とグリースアップ、そしてモーターのベアリングとVベルト、電源コードの交換を行いました。この時点で機能的には現役復帰出来ているのですが、スイッチを止めた時にモーターから「キュッキュッ」という音が聞こえることだけが気になってはいます。なにか心当たりはおありでしょうか?

    返信
    1. futsutsukamono

      SOULMANさん、こんにちは。

      接続されているモーターが、単相100V駆動であることを前提に書かせていただきます。

      単相モーターには、始動方式にいくつか種類があって、こちらは分相始動形モーターです。
      分相始動形モーターには、始動用に補助コイルが組み込まれていて、始動時に補助コイルを用いることで始動電流を抑え、定格回転数にある程度近づくと、遠心スイッチで主コイルのみの運転に切り替わります。
      ※記事中の「反負荷側ブラケットを取り外したところ。」の写真で、ハの字型の金具が接点で、その奥の黒いリング状の部品が遠心スイッチのユニットです。

      停止時は、回転数が落ちていく際に、遠心スイッチが戻り(カチッと音がするはず)、その後接点が擦れる音(シュルシュルシュル~、とか、キュルキュルキュル~)がモーターが完全に停止するまで続きます。

      起動時はほぼ一瞬で切り替わるので気づきませんが、停止時はフリーランでゆっくりと止まるので音が明確に聞こえます。

      記載の音は多分この音だと推察いたします。分相始動形モーターでは正常な音なので、気にされなくともよいです。

      以上、ご参考まで。

      返信
  4. SOULMAN

    早々に非常に詳しいご説明有難うございます。
    おっしゃってる通りの音なのでこれで安心して使っていけそうです!!
    前所有者の方も大事に使ってらっしゃたようなので、自分も大切に使っていこうと思っております。
    ほんとうにありがとうございます!!

    返信

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