使うか使わないかで判定して廃品を処分したら空きスペースが出来た
11月の終わりに廃品回収業者がやってきた。
曰く、「処分するか否かの判断は、まだ使えるか使えなくなったかではなく、使うか使わないか」
とても良いアドバイスであった。
その言葉を信じて、多数のガラクタを廃棄処分したところ、家の中の様々な場所に空きスペースができた。
2階のとある部屋の押入れもその一つ。
これを押入れと呼んで良いのか疑問に残るところであるが、畳敷きの部屋に付随する収納スペースと言う点からすれば押入れである。
ただし、なぜか幅が200cmを超える不思議なサイズ。引き戸も下段と中段で別々である。押入れではなく、バカでかい戸棚と言ったほうがしっくりくる。
こうした空きスペースは放置しておくといつの間にかまた埋まってしまうもので、今回は埋まる前に何かしら用途を決めなければならない。今回は、思い切ってベッドルームに用途変更することにした。
人は、一生のうち、かなりの部分を布団の中で過ごす。なるだけ快適なものにしたい。
年末年始の休みは、新型コロナウイルス感染症の発生によりおいそれとは出歩くことが出来なくなった。その休みの期間を利用して家に引きこもり、一気に仕上げる。
押入れの解体作業
押入れの床を剥がす
まずは、押入れの床を剥がしてみる。
雑巾摺りを鏨とくぎ抜きそして金づちを使って取り外し、ベニヤ板を剥がす。
これらは全て力づくである。再利用することは無いので、容赦はない。
取り外した床板はベニヤの 4mm。根太も細く、人が乗るには強度不足。そもそも根太が梁の上に乗っかっていない。支え板が梁と平行に柱に取り付けられ、その上に根太が乗っている。
この押入れの不思議なところは、敷居が床より数センチ高くなっていること。敷居の高さに押入れの床高さを合わせているので、根太が通常より上にあるのだ。
床板に加え、根太も張りなおすことにした。
押入れ床下の消毒
で、開け放った押入れ床下がかなりおぞましい状態になっている。
ここをこうして開けるのはこの家が建てられて以来初めてである。木材の破片がそのまま置き忘れられている。
ホコリも厚く積もっている。
さらに、夜中にタッタカタッタカとネズミが天井裏を走り回ってる音が聞こえていた時期があったとの記憶がある。
このまま掃除機をかける気にはなれなかったので、エタノール噴霧で消毒。
ヒタヒタになるまで大量に噴霧。
ちなみにとても危険なことなので、真似しないように。窓を開け部屋の換気扇を全力全開。電気スイッチ操作・火気厳禁、内部で火花が飛ぶ電動工具も操作不可である。もちろん家じゅうの消火器を準備。
押入れ壁を剥がす
高気密高断熱の発想が無かった時代の住宅である。
グラスウールの断熱材は使われているものの、薄く密度も低いものである。
断熱材を内壁と外壁の間に充密させたくなるが、古い住宅にそれをやってしまうと壁の内側がカビだらけになってしまう。
断熱材と内壁の間に隙間があって、1階および1階の天井裏から上がってくる空気を屋根裏まで通過させる流路となっているのだ。
この流路を断熱材で埋めてしまった場合、熱はともかく湿気を逃がすことが出来ず、夏あるいは冬に壁内側が結露してしまう。
写真の左側の断熱材の変色している部分はカビである。断熱材が浮きあがり流路を塞いでしまい、カビが発生しやすくなってしまったのだ。
さらに断熱材を剥がしてみる。
一安心である。断熱材の裏、つまり外壁の内側にカビでも生えていようものなら、それは雨漏りが原因である可能性が高い。
一通り剥がし、観察してみたがカビや防水シートの剥離は確認できなかった。
解体がほぼ終了したところで、水平チェック。何しろ築 45年である。
大きな地震に見舞われたり、家の前の道路が掘削され埋め戻されるような工事は何度となく行われてきた。
家は様々な要因で傾くのだ。
レーザー墨出し器で簡易チェック。短辺方向で 2/1000、長辺方向で 3.5/1000。
傾きの許容レベルは新築で3/1000、中古で6/1000程度らしので、思っていたより水平を維持してくれている。
ベッドへの改装
そして、いよいよベッドへの改装作業に取り掛かる。
単に床板や壁材を張り付けるだけではなく、床や壁の解体までやったので、この機に色々と修繕作業も併せて行った。
具体的には、断熱材の交換と増設。間柱の補強、横胴縁の交換、耐震金具の取付である。
今回のテーマはあくまでベッドへの改造なので、詳細な説明を割愛させていただく。
断熱材の交換
断熱材の一部にカビが確認されたので、さすがにこのままにはしておけなかった。
使った断熱材は、旭ファイバーグラスのグラスロンウール GW64で、厚さが 25mmの製品。
装着する前に断熱材表面に掃除機を掛けると細かなガラス繊維の飛散が軽減できる。
壁と 1階天井裏とその側壁。ベッドの床下は 2枚を貼合せ 50mm厚。
根太は 梁に直接 70mm×45mmの広葉樹を取付け、根太の間に断熱材を挿入する。ただし、壁近くは、重ね合わせた下側の断熱材をカットし、空気の流路を確保した。
床と壁の下地施工
床にはラワン合板 12mmを、壁には同じくラワン合板の 9mmを張り付ける。本当なら、透湿性のある材を使いたかったのだが、個人での入手は極めて困難。
天井と言うか、押入れ中段の床下には板を張らずにそのまま羽目板を取付ける。ここに記載はしないが、根太の間には厚さ 40mmのスタイロフォームをはめ込む。押入れの下段も中段も同じ室内なので基本的に断熱材は必要ない。気分的なものである。
床に檜の羽目板を張る
養生に使っているフローリング用マットがずれて、畳がチラリ。写真は固定する前の板を仮置きしているところ。
見てわかる通り、使った板はフローリング材ではなく羽目板である。
人が立ち上がって歩き回る空間ではなく、ほとんど布団が敷かれた状態となるため、安価な羽目板を使った。
壁と同じ材料なので、コスト削減が期待できる。
フローリング材が本実突き付け加工であるのに対し。羽目板は本実 V溝加工である。
羽目板の V字型の溝にはほこりなどが溜まりやすく、一般的には床に用いない。
今回は万年床なので、気にする必要はなく、羽目板をそのまま使用した。
フローリング材を下地に固定する場合、雄サネ側にビスやタッカーを打ち込む。一方、V溝加工された羽目板は雌サネ側である。
雌サネ側にビスを打ち込むと床鳴りしやすいと言われており、どうしようかと悩んだ末に、今回は雄サネ側をビスで固定することにした。
目透かしになっていないので、ビスの頭は隠れずどうしても上から見えてしまう。致し方ないものと妥協した。
壁に檜の羽目板を張る
使った羽目板は檜。無地上小。
無地上小にしたのは、寝床だから。節有りよりも目移りせずに落ち着いて寝ることが出来る。
羽目板の裏面には反り止めの溝がつけられていて、ボンドをこの凸の部分に塗ると無駄が少なくなる。
使うボンドはウレタン系の根太ボンド。
無垢のフローリング材や羽目板は、杉と檜に人気が二分されている。
杉は木目のコントラストが強く、迫力ある空間になる。一方、檜は白と赤の境界がぼやけていて木目がきつくなく、全体的な色合いもピンクに近い。
就寝する空間であれば木目による目移りがしにくい檜がお勧め。
床も壁も取り付けにはボンドの他にタッカーを併用する。
写真はピンタッカーで、仮止め程度の締め付け力である。主役はあくまでボンドなのだ。
その他付帯
秘密基地とまではいかないが、就寝前後のわずかな時間を快適に過ごすための付帯設備を取付ける。
棚板を付ける
この空間の床から天井までの高さは 110cm。棚板を取付けるには十分である。
枕側に大きな棚板を付けると圧迫を感じるので、足元側に棚板を取付けることにする。
棚板は残り材を使い 2枚を重ね合わせてボンドで接着。
端面はトリマーでボーズ加工。
足元の天井近くにコの字型に受け材を取付け、板を置く。置くだけである。
電気毛布や電気あんかのためのコンセントを増設。
棚板の奥に電気コードを通すための穴をあけておくと使い勝手が一段上がる。
判別いにくいが、露出コンセントを取付けた板は檜の集成材を使っている。裏側の補強その他の理由で羽目板は使えなかった。
こちらは枕側の小さな棚。アルミ板で厚さは 8mm。220mm × 180mm。
これをアングルで支える。アルミ板へのポイントタップは苦手なので、板の裏側にポップリベット・ファスナーの M4フラットナットを圧入した。
就寝前のメールチェックや WEBサイト巡回に使ったスマホやタブレット、そしてモバイルバッテリーなどを置く場所。文庫本も置く。
充電したまま放置の場合もあり、檜材ではなく、熱対策として敢えてアルミ板を使う。
飲み物を置いてはいけない。コーヒーをやたらと溢す人が住んでいるので、飲み物持ち込み禁止指定区画としている。
照明と電源
壁埋込タイプで、ベッド周りに取り付けられる照明器具を検索したところこれ(パナソニックのLGB71591 LE1)に出会った。
ベッド周り専用と言ってよい。
ホテルの寝床で使われることを前提に作られたもので、一般家庭でこれを取付けている人はかなりレア。
特徴は、光軸を上下120度、左右各45度に動かすことが出来ること。
そして、畳んだ状態で点灯可能で、常夜灯として使えること。
機能にはとても満足しているのだが、造りやプレートの仕上げはかなりチープである。
就寝前と言えば、本(読書)やスマホやタブレット。
電源設備は USB接続による電源供給がメインとなる。
こちらはパナソニックの埋込(充電用)USBコンセント WTF14764W。
最近モデルチェンジして、供給電流が 2.4Aから 3.0Aに上がった。
こうしたコンセントは、寝た状態で手の届かない範囲に取り付けると安全性が高まる。
ちなみに枕側のコーナー棚は手が届く高さに取り付けている。
人間を駄目にする寝床を作ってしまった
塗装は、オスモカラーのフロアークリアーエクスプレスつや消しの 2回塗り。多分定番。
冬場は塗料の乾きが遅く、遠赤外線電気ストーブを遠目に置き、扇風機を回して風乾。
臭いを我慢できるまでに 2日間掛かった。
塗装後の色合いは、元のピンクから若干オレンジ色っぽくなった。ほぼ変わらないと言ってよい。
手触りは、元の #240のサンダー掛けに比べると、滑り止め用フィラーが含まれているからかサラサラ感が若干下がった。フロアー用塗料なのでこれはこれで正常。
ベッドルームの全景。
寝るだけのスペースなのでかなりシンプルな作りになった。過去のコミケでゲットしたポスターを天井に張り付け、足元側の棚にフィギュアを並べて完成である。
寝心地は快適そのもので、布団から出たくなくなる。完成して実際に使ってみて何を作ったのかがわかった。人間を駄目にする寝床。
廻り縁に見える箇所は、も中段との仕切り(下段の天井であり、中段の床)の受け材で元々取り付けられていたもの。ラワン材。
雑巾摺りは取付けていない。
今回使った羽目板は、東濃桧 羽目板・フローリング 製造直売 -羽目板.comで購入。
長さ 3m 働き 105mm。こちらを 30本手配し、施工後の残材が 2m 1本と 20cm未満の端材が 25枚程度。
ここは、原木を購入し製材する生産者で、加工後に即配送してくれる。
加工後に日数が経った羽目板は曲がったり反ったりし、非常に使い勝手が悪く、今回購入した板は 3mの長さがありながら、試しにサネを合わせたらすっぽりと収まり、曲がりや反りもない優良品であった。
以前、ホームセンターで購入した 1mの羽目板は、短いにも関わらず、サネの収まりが悪くバイスを使う羽目に会った。
加工後の無垢のフローリング材や羽目板は、到着後なるべく早く施工することが推奨されている。
実際にマットレスを敷いてみた。
このマットレスはセミシングルと呼ばれる小さめのタイプ。幅80cm× 長さ195cm× 厚さ7cm。
長さ方向に若干の余裕があり、幅方向はピッタリサイズである。床の実測値は幅 80.5mm、長さ 198.5cm。
掛け布団は部屋側にはみ出すものの、特に支障なく快適に眠れる。
敷居は押入れの床より高く、マットレスがすっぽりと収まり、ズレることがない。