マスクと消毒液が手に入らない
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が止まらない。
市販消毒液が新型コロナウイルスに有効とは限らない
自衛しようにも衛生用品が品不足で、特にマスクと消毒液が手に入らない。
感染防止の最も有効な手段は、外出しないこと。
ただし、そうは言っても不要不急ではない用事は決してゼロにははならないわけで、良く考えた上で、したくないけれど外出せざるを得ないケースが出てくる。
外に出てみれば、歩く人々が皆マスクをしている。この風景は日本にほぼ定着してしまった。
一時期に比べ、最近はマスクそのものは、探せば入手できる環境になりつつある。
一方、やっかいなのは、消毒液の入手である。こちらは困難を極める。
でだ。そもそもこうした消毒液は新型コロナウイルス感染症の予防に有効なのか。
新型コロナウイルスに対し、「ビオレu 手指の消毒液」を販売する花王はこう答えている。
「ビオレu 手指の消毒液」および「ビオレガード 薬用消毒スプレー」は、手指・皮膚の洗浄・消毒の効能・効果をもつ指定医薬部外品です。
有効成分はベンザルコニウム塩化物(0.05w/v%)です。製品には、添加物としてエタノール(アルコール)を55.5%配合しています。なお、新型コロナウイルスへの効果は確認できておりません。
厚生労働省のホームページでも、「感染を予防するために注意することはありますか。心配な場合には、どのような対応をすればよいですか?」の項に、「石けんによる手洗いや、手指消毒用アルコールによる消毒などを行う」と記載されています。
有効成分であるベンザルコニウム塩化物については、効果検証段階にある。
(2020年4月30日現在、一般に市販されているアルコール濃度が70%未満の商品は、新型コロナウイルスの消毒に有効と、どのメーカーも公言していない。)
自分は、これを見つけた瞬間、市販消毒液の購買意欲がゼロになった。
医療機関も大変らしい
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は令和 2年 1月 28日に感染症法・検疫法に基づく指定感染症・検疫感染症に指定された。
厚生労働省は、優先供給を図っているものの、十分ではなく、今なお不足している。
新型コロナウイルスに関連した感染症の発生に伴う手指消毒用エタノールの優先供給について
そしてあまりにも入手が難しい消毒液について、令和 2年 3月 24日に高濃度エタノールを臨時的に特例的に消毒液に医療機関で使用することを厚労省が許可した。
新型コロナウイルス感染症の発生に伴う高濃度エタノール製品の使用について
こうした対応により、最近医療機関で消毒液不足と言う声は聞かれなくなった気がする。医療向けエタノールに比べて生産量が桁違いに多い為だ。
さて、医療機関等において、高濃度エタノール製品が手指消毒用エタノールの代替品として用いることが差し支えない条件とは、
Ⅰ.アルコール事業法(平成 12年法律第6号)に規定する特定アルコールを取り扱う既存の事業者又は同法に規定する許可事業者から購入したアルコールを用いて高濃度アルコールを製造する既存の事業者から購入
Ⅱ.エタノール濃度が原則 70–83vol%の範囲内であること
Ⅲ.含有成分にメタノールが含まれないこと
医療機関ではないけれど代替消毒液を造りたい
市販消毒液が新型コロナウイルスに有効でない可能性があるのを知って、本当に効果がある消毒液の入手意欲に拍車がかかった。
実際に使えそうな原料について調査してみた。
アルコール流通製品は、いくつかの法律が適用され、規制を受けている。
コンビニなどで手に入る医薬部外品、薬局で購入できる一般医薬品として販売されている消毒薬は薬事法に定められた商品。こちらは厚生労働省が所轄する。
そして、今回、医療機関等で一時的に手指消毒用エタノールの代替品として使用が認められたのが工業用アルコールに分類される特定アルコールのみ。工業用アルコールはアルコール事業法により定められ、経済産業省が所轄。
使用が認められた高濃度アルコールとはどんなアルコールなのか
名称 | 法令 | 所轄 |
---|---|---|
工業用アルコール | アルコール事業法 | 経済産業省 |
医薬品 | 薬事法 | 厚生労働省 |
酒類 | 酒税法 | 財務省 |
アルコール全般 | 消防法 | 消防庁 |
工業用アルコールにもいくつかのバリエーションがあって、今回、厚生労働省により認められたのは特定アルコール。こちらはは用途が限定されず自由に使用することができる。ただし酒税相当の加算金が上乗せされるのでとても高価。
一般アルコールは、製品の原材料に使用する、あるいは金属部品の洗浄に使用するなど用途が限定され、使用する際は経済産業省の許可が必要。元々の用途とは異なる、例えば従業員の消毒に使用することはできず、使用した場合は罰則が科せられる。
分類 | 使用の制限 |
---|---|
一般アルコール | ・使用において許可が必要。 ・用途が限定される。 ・年に1度使用量など決められた項目の報告義務。 |
特定アルコール | ・アルコールが酒類の原料に不正に使用されることを防止するために必要な額として経済産業省令で定めるところにより計算した額(以下「加算額」という。)を含む価格で販売。 ・自由に流通、販売、使用が可能。 |
アルコール系溶剤は使えるのか
成分表を見る限り、消毒用アルコールの代替に使用できそうに思える商品にアルコール系溶剤がある。
例えば、日本アルコール販売株式会社が取り扱うソルミックス AP-7は、希釈調整さえしてあげれば特定アルコールで無いことを除き、厚生労働省から示された先の条件に合致する。
成分 | 標準組成比率(%) |
---|---|
エタノール | 85.5 ±1.0 |
I.P.A | 5.0未満 |
N.P.A | 9.6 ±0.5 |
水分 | 0.2以下 |
アルコール溶剤は変性アルコールの一種で、変性アルコールとは、飲食用に転用されることを防止するために変性剤を入れたエタノール。一般アルコールを主原料とした商品で、加算金は上乗せされていない。すなわち安価。
もちろん、医薬品等にも変性アルコールが普通に存在する。
医薬品等に使われる変性アルコールと一般工業向けのアルコール系溶剤の最も大きな違いは、日本薬局方に記載された基準に則って製造、管理そして試験されているか否か。
アルコール系溶剤の製造メーカーである三協化学株式会社は、「弊社アルコール系溶剤の除菌・消毒効果について」と題して、こう述べている。
結論から申し上げますと、弊社アルコール系溶剤は消毒や除菌にはお使いいただけません。
と申しますのも、弊社アルコール系溶剤は工業向けに開発・製造された製品で、医薬品として販売するための検査や試験を行っていないためです。
そのため医薬品しか用いることのできない「消毒」という言葉を使用することができません。
また、除菌に関してもエビデンスがございませんので、実証実験も行っていない製品を「除菌できます」とご案内することはできません。
消毒や除菌用アルコールとは規格が異なりますので、どうか用法をお守りになってご使用いただけますようお願い申し上げます。
三協化学株式会社が扱うアルコール系溶剤の商品名は エタコール7。
文章の書き方を見る限り、新型コロナ感染症の感染拡大で、消毒用途に使えるかの問合せをかなりの数受けたものと推察する。ご愁傷さまとしか言えない。
組成からして、新型コロナウイルス感染症の予防消毒に有効で、多分、これを否定する人はいないはず。ただ、消毒に使用してよいかと問われれば、消毒薬としての安全性等の試験が行われていないので、わからない、もしくは回答できない。となる。
特定アルコールもアルコール系溶剤も、飲用に供しない限り、用途の規制はなく、購入・使用にあたって使用許可等の手続きが必要ない完全な自由商品なのだが、やはり製造メーカーがこのように言ってるのだ。消毒用途に使えるなどとは決して言えない。推奨したり、さらに作ったものを人に与えたりなど、怖くてできない。
そもそも、特定アルコールも、今回厚生労働省が先の一文を示す以前は、同じような言い草にならざるを得なかったはずなのだ。
自由に使用できる商品に対し、意味のない言葉だと思うが、ここではやはり「自己責任」を使いたくなる。
以下ループ。
ところで、イマイチ納得できないのが、食器・手すり・ドアノブなど身近な物の消毒に、本来の用途とは異なる塩素系漂白剤希釈液を推奨する厚生労働省と経済産業省。
商品に張り付けられたラベルの注意事項には、「用途外に使わない。」としっかり記載されてる。使い方を間違えるとかなり危険な目に合うと思うのだが(ボソッ
エタノールを希釈する
特定アルコール、日本薬局方 エタノールや無水アルコールが入手できたとしても、そのままでは使えない。
実際にエタノールを新型コロナウイルス感染症の予防消毒液として使用するには、効果の高い濃度に調整する必要がある。その濃度は、70~83vol%。
水道水で希釈しても問題ないと思うのだが、何となく精製水を使いたくなる。自分は、精製水と記載されているバッテリー液を使った。
ちなみに、精製水は一度封を開けてしまうと速やかに劣化していく。水道水のほうが消毒用の塩素が入っているので日持ちする。
実際の希釈方法として、厚生労働省から特定アルコールの使用の手引きが公開されている。(医療機関等向け)
水とアルコールを混合する際、水の分子がアルコール分子の隙間に入り込むため、100ml(水) + 100ml(エタノール) = 200mlにはならず、混合後の容積は減少するので注意。
携帯用エタノール消毒液スプレー
実際に使用するには、スプレーボトルに詰め込むのがベスト。特に携帯用スプレーがあると、使用場所が限定されず、かなり重宝するのでおすすめ。
不要不急ではなく、どうしても外出しなければならないときに持ち歩く。
何かに手が触れた後に、機会あるごとに手に吹き付けてる。