ファスナの開閉はスムーズに保ちたい
金属製ファスナーは、樹脂製と比較すると重厚感があり個人的に好み。ただし、引っ掛かり感が出やすく操作性については樹脂製に劣る。
引っ掛かりを感じた状態で、無理に力を入れて開閉してしまうとファスナーを痛めてしまう。
写真はスライダー2個使用した頭合わせタイプの金属ファスナー。主として鞄に使用される。
こちらは エレメント(務歯=ムシ)が一つ一つ磨きが掛けられた YKKのエクセラと呼ばれるシリーズ。やや高級なファスナーである。
磨きが掛けられているとは言え、やはり金属ファスナーであることに変わりはなく、樹脂ファスナーと比べてしまうとやはり引っ掛かり感は残る。
ファスナー潤滑材として、シリコーンオイルとパラフィンのいずれかが使える
ファスナーの滑りが悪くなったときの対処方法として、YKK公式サイトの「ファスナーのよくあるご質問」中に、次のような記載がある。
Q:ファスナーの滑りが悪くなったときはどうすればよいでしょうか?
A:ファスナーの滑りを良くするスプレー“ファスナーメイト”があります。また代用品としてロウソクのロウをエレメント部分に塗っても構いません。
ここに記載の“ファスナーメイト”は同社が取り扱うスプレータイプの潤滑剤。多分、中身はシリコーンオイル。一方のロウソクは、潤滑剤として使われるパラフィンそのものである。
どちらを使っても滑りは改善するのだが、スプレータイプは、周囲への拡散があるため取り扱いが難しい。
もう一つのロウソクを使う方法だと、そもそも固形なので塗り込みに手間を要してしまう。
ファスナーの滑りを良くする方法は、いずれにせよ何らかの潤滑剤を塗布することであるが、とりあえず自分はシリコーンオイルそのものを刷毛で塗り込んで対処している。
ファスナー潤滑に使えそうな市販のシリコーンオイル潤滑剤
こちらは、シリコーンオイル 100%の潤滑剤で、ソフト99製の“チョット塗りエイド シリコーンオイル 12ml”。
シリコーンオイルは、身近なモノだとシャンプーの原料であったり、靴クリームの原料であったり。もちろん工業用にも使われ、オイルの中では最も多用途と言われている。
この商品が良いところは、ご覧のようにハケが蓋に付いている点。ファスナーに塗布するのに丁度良い。また、収納可能なコンパクトサイズで、保管場所に困らない。
ただし、驚く程内容量が少ない……
シリコーンオイルは多用途。思い切って1kg缶を購入するのも一つの手
こちらは機械の潤滑油として使われる一般的なシリコーンオイル。撥水性も備えている。さらにはツヤ出し効果も得られる。撥水性に関しては、自動車用のワックス成分であるパラフィンやカルナウバロウに匹敵する。
信越化学工業のシリコーンオイル KF-96には、様々な粘度の製品があるが、これは 50m2/s品。サラダオイル程度の粘度である。サラサラではないがべと付いたりはしない。
この 1kg缶を小分けし、布に浸してファスナーを拭いても良いし、小さなブラシで塗布しても良い。
実は、このシリコーンオイルが最も効果を発揮するのは、ナイロンやエンジニアリングプラスチックであるポリアセタール製のファスナー。一方、金属ファスナーの場合、その材質によっては高い潤滑効果が得られない場合もある。
例えば、一番上の写真の丹銅(銅と亜鉛の合金)製ファスナーはかなり効果が認められる。片や、上から二番目の洋白(銅と亜鉛とニッケルの合金)製ファスナーに対しては、効果は間違いなくあるのだが期待していた程ではない。潤滑油は、潤滑対象の材質を選ぶのだ。
ところで、1kgは量として多すぎではないかと思われてはいないだろうか。
自分もそう思っていた。しかしながらシリコーンオイルの用途は多義に渡る為、案外早く消費してしまう。
代表的な用途としては、自動車のボディやガラス、タイヤ、そして内装などに塗ることであろうか。もちろんツヤ出しを目的に家庭内にあるプラスチック樹脂製品に塗っても良い。
あるいは、サッシのレールなどなど。
靴クリームの主原材料として使われていることからわかるように、雨の日の朝、家を出るときに布で靴にサラッと一拭きすれば充分以上の撥水効果が得られる。
市販の靴用ツヤ出しスポンジには、こうしたシリコーンオイルが浸透されている。梅雨時にとても重宝する。
ファスナー潤滑のみに使うのであれば多すぎだが、汎用オイルとして色々な用途で使えるので決して無駄にはならないのだ。
注意しなければならない用途の一つに、床への塗布がある。フローリング床に塗って靴下のまま歩くと滑りすぎて転ぶこと間違いなし。
なお、メーカーである信越化学工業は、シリコーンオイル KF-96はあくまで工業用であり、一般家庭で使用すること前提に販売していない。このあたりは自己責任となるので、SDS(安全データシート)を活用するなど、各自よく検討した上で使用願いたい。