トグルクランプの謎。ネジやバネが無いのに何故締め付け固定が出来るのか

実は意外と使いどころがないトグルクランプ

角田興業の下方圧え型トグルクランプ探したけど用途が見つからず、あまりに使いどころが無いので、一時は女房が花瓶に生けた花と共に、玄関下駄箱の棚の上でオブジェと化していた。オブジェとしては優秀で、宅急便の配達員の方々や新聞の集金係の人など、家に訪れた人は、必ずチラ見していく。

動くモノなので、小さな子供らの玩具にでもと思ったが、クランプの中心の穴に指を入れて閉じると、大怪我間違いなし。玩具にさえなれない動く何かと化し、やはりオブジェ以外に使いどころが見当たらない。

そもそも購入の動機からして不純であった。購入理由は、ホームセンターで見つけたこれが、何故ロック出来るのかわからなかったから。目で見ても、手に取って触れて動かしてもかわからなかった。

そう、ただ単にロックする機構がわからず、それを確かめる事を理由に購入したのだ。不純な動機であるが、考えようによっては純粋であるとも言える。しかしながら、この際限のない探求の心が理解され尊敬されるかと言うと、そんなことは絶対にあり得るはずもなく、いつの間にか玄関下駄箱の棚上から、下駄箱の中の奥深くに移動させられていた。女房曰く、「花がけがされる」だそうだ。

まあ、確かに花によるおもてなしとは異なり、チラ見していく人は単に「何、この謎の物体?」程度の興味によるものである。オブジェとしては優秀であるが、決しておもてなし向けとは言えない。

機構学の基本、四節回転連鎖のメカニズム

下方圧え型トグルクランプ 四節回転連鎖のメカニズムさて、この花をけがす呪いのオブジェクトアイテムがいったいどうやってクランプとしての機能を果たすのか。持ち帰って調査してみた。

機械工学に機構学なる何やら気むずかしそうな分野がある。機構学は英語名ではメカニズム(Mechanism)で、こちらの英語名の方が馴染み、受け入れやすい。そして、このトグルクランプの固定のメカニズムは、機構学の基礎の基礎である「四節回転連鎖」の応用であることがわかった。

四節回転連鎖は写真および図のように、A、B、C、Dの 4つの回り対偶とLink1、2、3、4の 4つの節からなる閉ループ構造。ん~難しい言葉がチラホラ。この行は読み飛ばしておk。見なかったことにしてもおk。

この四節回転連鎖のメカニズムを実際のトグルクランプに当てはめてみよう。A-B間の Link1はクランプの土台に該当し、固定である。Cは Bを中心に半径がLink2の長さを持った円周上をを移動する。同じように、Dは Aを中心に 半径がLink4の長さを持つ円周上を移動する。Cと Dは Link3で結ばれていて、その動作は Link3の長さで拘束され制限を受けている。すなわち、D(クランプアーム側)は、C(ハンドレバー側)に従属して運動する。

下方圧え型トグルクランプの折り畳み位置折りたたんだときにはなるべくコンパクトにしてスペースを節約したい。そんな思いの結果がこの姿。クランプアームとハンドレバーが矢印の点で接触しストッパとなっている。

写真はカクタの下方圧え型トグルクランプ。

着目したのは思案点。その原理と活用

下方圧え型トグルクランプ 四節回転連鎖のメカニズム 思案点折りたたんだ状態からクランプアームを動かしていくと、隣接する節(Link)が一直線上に並ぶ位置が出来る。この点を思案点と言う。

写真では、A-D間の Link4とC-D間の Link3が一直線。Cは思案点が発生した位置で最も右側に位置し、Dが a、あるいは bいずれの方向に動作しても Cは円周上を反時計回り移動する。

これを違う視点から見てみよう。思案点が存在する位置で、Cを Bを中心とした円の円周上を反時計回りに動かすような力を加えた場合、Dはどのように動くか。

動かないが正解。Dが思案点を超えて、わずかでも a方向にあれば、Dは Aを中心に Link4を半径とした円周上を反時計回りに移動する。わずかでも b方向にあれば時計回りに移動することとなる。

以上、思案点の説明。

下方圧え型トグルクランプ 四節回転連鎖のメカニズム ロック位置上の状態からさらにレバーハンドルを動かすと、もう一度思案点に出会う位置が存在する。B-C間の Link2と C-D間の Link3が一直線の位置である。

この思案点前後の動作状況を見てみよう。

クランプアームをワークを締め付ける方向に動かし、Cが C’位置に来たときに、クランプ押さえ先端ボルトがワークに押し付ける力が加わるとする。クランプアームをより動かすと、押さえ付ける力は強くなり、その力は思案点で最大となる。さらにクランプアームを動かすと、押さえ付ける力は弱まるものの、思案点を通過し、Cは C”の位置に来る。この思案点をほんのわずか超えたところで写真の矢印の位置にストッパを設け停止させる。この位置でワークを持ち上げようとする力が加わっても、ストッパが利いているので、Cはクランプ開放方向には移動することはない。すなわち、この位置がワーク固定位置である。

トグルクランプは、このほんのわずかな思案点を通過する前後で動作方向が変化することを利用しロックを実現している。

ここで、トグルクランプは先端ボルトのゴムに接触してから、思案点に至るまでの間に先端ボルトの中心点は移動する。また、思案点を通過した後は逆方向に中心点は移動する。押さえる力が加わる中心点のこの移動は、ワークを固定することが目的のクランプにとって不都合な挙動である。このヒステリシスを最小にするには、ゴム先端ボルトの長さ調整が必要で、また、その長さ調整は押し付け力にも影響を与える。

つまり、トグルクランプを使ったワークの位置決めと締め付け力の調整は、先端ボルトの長さ調整が肝となる。


ボルトやバネで締め付けるクランプと違って、トグルクランプの締め付け固定メカニズムは、思案点に着目したとても興味深いものであった。思案点は、動かない点であると同時にどちらかに動く点であり、いずれの方向にも動く点でもある。思案点のこの特殊性は、機械設計上非常に厄介な存在で弊害となる。一方で、この特性を利用して、トグルクランプのようなメカニズムが生まれる。こうしたメカニズムを考える人ってスゴイと思う。

ところで、これほどスバラシイ機構を持ちながら、呪われたオブジェクトアイテムとして認定されてしまったこのトグルクランプ。名誉を挽回するべく、その利用方法を真剣に考えようかと思っている。して、何を作ろうか、、用途は思い浮かばず、、やはりオブジ(ry

トグルクランプの使い方や使い道は実際に何かを作った時でも記事に挙げます、、


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