M.2スロットにSSD
M.2スロットを備えるマザーボードが増えてきた。ほとんどの M.2スロットは NVMe論理インターフェースを持ち、Serial ATA 3.0 の 6GGbpsを遙かに超えるデータ転送速度 10Gbps~32Gbpsを提供してくれる。
一昔前は、SSDを複数使い、 RAID0を組んでやっと得られていた速度である。
こちらの SSDのインターフェースは PCIe NVMe 3.0×2で、今時の、より速度の出る M.2 SSDが採用している PCIe NVMe 3.0×4の半分の帯域で動作する製品。とは言え、速度は十分なもので、何より従来のsATA接続の箱形 SSDに比べ、ケーブルレスで且つワンタッチで装着出来、置き場所に困らず使い勝手がとても良い。
写真は、インテル® SSD 800pシリーズ 118GB。に、ヒートシンクを取り付けたもの。
で、この SSDがやたらと温度が上がるため取付けてみた。
風が当たらない場所に装着する時は昇温対策を
先日組んだ PCの中身である。
マザーボードは、ASUSの PRIME B360-PLUS。M.2スロットは 2つ付いていて、それぞれにインテル® SSD 800pシリーズ 118GB版と 58GB版を取り付けている。
写真向かって左側の M.2 SSDはケースファンからの風が通り抜ける流路上にあり、且つビデオカードの冷却ファンの影響を受けてか、稼働時の温度上昇は大きくない。
一方、写真向かって右側の M.2 SSDは、CPUクーラーから漏れ出る風に頼った冷却となっていて、条件によっては激しく温度上昇する。
強制対流による熱伝達は必須か
M.2 SSDとは何の関係も無いと思われる CPUクーラーの写真をイキナリ掲載。
実はこの位置(CPUクーラー直下)に取り付けた M.2 SSDの冷却にとっては大いに関わりがあるのだ。
左は Noctua製サイドフロー CPUクーラー NH-U12S。右はサイズ製 虎徹 Mark II。
CPUクーラーを変更したときの M.2 SSD温度が次の表である。SSDの温度を計測することを目的に試験した訳ではなく、クーラー別に OCCTを用いて CPUのストレステストをした際にたまたま記録していたものだ。室温は 25℃で、CPU冷却ファンの回転数は、750rpmほど。
対象は、インテル® SSD 800p 118GB版で、もちろんこの時は、M.2 SSDにヒートシンクはまだ取り付けていない。
クーラー | M.2 SSD温度 |
---|---|
Noctua NH-U12S | 51℃ |
Noctua NH-D15S | 44℃ |
サイズ 虎徹 Mark II | 33℃ |
Noctua NH-U12Sと サイズ 虎徹 Mark IIとでは 18℃の差がある。この差はいかな理由か。
ここでもう一度写真で見比べてみよう。クーラーの側面が Noctua NH-U12Sがマスクされているのに対し、サイズ 虎徹 Mark IIは開放されている。
つまり、虎徹 Mark IIの場合、CPUクーラーの側面から漏れ出る風の量や速度が多く、CPU直下に取り付けられた M.2 SSDをそれにより冷やしてくれているのだ。
現在、この PCに取り付けている CPUクーラーは Noctua NH-D15S。M.2 SSDをそこそこ冷やしてくれているが、そこそこ不安である。
季節は夏。暴走の季節である。パーツの寿命を著しく削ってくれる季節である。気休めとわかっていても手を出したくなる季節である。M.2 SSD用ヒートシンクに手を出した。
M.2 SSD用ヒートシンク シルバーストーン SST-TP02-M2 パッケージ内容
M.2 SSDのヒートシンクの取り付け方法いくつかあって、このシルバーストーンの SST-TP02-M2はゴム製ベルトで固定する方法が取られている。
基板にとっては最も優しい。一方で、ゴムが劣化し張力を失った時には、外れ落ちてしまう可能性がある。
材質は多分シリコーン系ゴムなので、劣化はしにくいと思う。
付属熱伝導パッド
熱伝導パッドは 3種類付属し、今回実際に使用するのは、青色の一枚のみ。
他の2枚は、同社の 2つの M.2ポート (M key)を1つの PCIe x4インタフェースに変換する拡張カード SST-ECM22を利用する時に用いるもの。
取扱説明書はこの辺りの説明を省いてしまっているので注意が必要である。
M.2 SSD基板の背面に、放熱パッドだけを貼り付けても何の意味もなさない。
ヒートシンクのサイズは 70mm (W) x 10mm (H) x 20mm (D)。付属する熱伝導パッドは 70mm (W) x 10mm (H) x 19mm (D)。
インテル® SSD 800pシリーズの場合、基板の中心付近の 2つのメモリが一番背が高く、周辺の実装部品はやや低くなっている。シールを剥がして、グリスを塗って直接装着など、ややこしいことは考えずに、素直に熱伝導パッドを介して取り付ける。
と言うか、メモリーコントローラ自体も発熱するし、自身の経験から言えば、今まで SSDがお亡くなりになった原因の多くはメモリーチップではなく、コントローラの故障によるものが圧倒的。メモリーチップ以外の実装部品も冷却が必要なのだ。
M.2スロットに取り付け
マザーボードにあらかじめ装着されているナットの上に、高さ 4mmの六角スペーサーを介して取り付ける。両面実装の基板も取り付けられるよう、マザーボドとの隙間は十分に確保されている。
なお、マザーボードへの取り付け方法は、マザーボードメーカーによって異なる。付属する専用のネジを紛失すると痛い目に遭うこと間違いなし。
実際にマザーボードに組み付けてみると・・・地味すぎる……
2枚の青い基板のままであったほうが見栄えが良かった気がする。
とは言え、このケースは側面パネルのアクリル板を鉄板に交換してしまっているため、通常外部から内側を覗き見ることはできない。
いずれにせよ、デザインよりも機能・性能を優先する自分にはどうでも良いことであった。
シルバーストーン公式サイトに掲載されているグラフについて
こちらはシルバーストーンのサイトのサイトに掲載されているヒートシンク SST-TP02-M2の性能を表したグラフ。同社の拡張カード ECM22と組み合わせたときの試験データをプロットしたものである。
赤いラインがヒートシンク無し。青いラインがヒートシンクを取り付け、ECM22に装着した M.2 SSDに 200GBのデータを転送したときの温度推移だ。
ある意味、もの凄く不親切なグラフである。また、そしらぬ顔でこのようなグラフを記載するのはいかがなものかと感じざるを得ない。
一方で、ある意味もの凄く役に立つデータでもある。
グラフ中の青いラインが、途中で切れてしまっているが故の感想である。ヒートシンクを取り付けることにより、温度が 64℃以上に上がらないようにも見えてしまうからだ。実際には、より時間を掛けて計測すれば、青いラインも引き続き右肩上がりに上昇していくのである。
ユーザーはヒートシンクを取り付けることで、最大温度がどこまで下がってくれるかが知りたい。なので、これだとあまり参考にならない。敢えて故意に青いラインを途中で切ったのでは無かろうかと疑ってしまう。青いラインが赤いラインと同様に定常になる温度は、意外と赤いラインに近いものなのかも知れない。などと、想像してみたり。
一方で、赤いラインに対し、青いラインの温度上昇速度が低くなっていることが伺える。ヒートシンクを取り付けることにより、熱容量が上がり、ヒートシンクの熱容量の分だけ温度上昇がゆっくりなのだ。熱容量の大きさを表すことを目的としているのならば参考になるグラフと言えよう。
各種試験実施時のM.2 SSDの温度
では、実際に取り付けた時のデータはと言うと、
まずは、敢えて性能を測定するためのベンチマークソフトは使わず、単純に 100GB分(50ファイルの合計)のファイルを転送しただけのテストを実施してみた。
ヒートシンク | アイドル時SSD温度 | 100GB書込み後SSD温度 |
---|---|---|
ヒートシンク無し | 51℃ | 55℃ |
ヒートシンク有り | 47℃ | 51℃ |
100GBとしているのは、装着している M.2 SSDの実容量が 110GBだからである。100GBのファイル群を別の SSDに書き込んで置き、そこから M.2 SSDに転送。速度はSATA 3.0の上限、480MB/secで、時簡にして、3分半だった。
たったの 3分半なので温度上限に達しない可能性があるのは否定出来ない。これが より大容量の SSDの場合であれば、より大きなデータを使ってより長時間転送が行える。その際は上昇温度は上限に達し、異なる結果が見れたかも知れない。
次に、ベンチマークソフト CrystalDiskMarkを掛け、その時の最大上昇温度を計測してみた。
ヒートシンク無しで、風が当たらないような場所に取り付けた場合、70℃を超えてくることは容易に想像出来る。とは言え、ヒートシンク有りと無しの差は、自分が予想していた数値より小さかった。
CrystalDiskMarkテスト時の最大温度 | |
---|---|
ヒートシンク無し | 68℃ |
ヒートシンク有り | 61℃ |
さらに別の試験。
読み出しファイル、書き出しファイル共に対象の M.2 SSDに設定し、7日間24時間無停止でエンコードソフト(TMPGEnc Video Mastering Works 6)を稼働させた時の最大温度を計測した。
気温が 38℃を超えた日が続いた 2018/7/7~7/14に掛けて行ったもので、昼間のエアコン無しの室内温度は最大で 38℃に達していた。
エンコードソフト稼働時最大温度 | |
---|---|
ヒートシンク有り | 55℃ |
結果を見る限り SSDのヒートシンクの能力って、こんなものか。が正直な感想である。
期待するはCRYORIG社のFrostbit
M.2 SSD用ヒートシンクで期待されているのは、CRYORIG社の Frostbit。
ただし、その発売は 8月らしく、時期によっては夏が終わりを告げてしまう。
このシルバーストーン SST-TP02-M2は、それを入手するまで短期間、つまり一時的に使うものとして購入したものだ。
ただ、テストをした結果、本気で冷やすのであればヒートシンクよりも、エアフローの再検討のほうが温度低減には効果があることがわかってしまい、また、この環境であれば新たに購入するまでも無いかなと思いはじめてきた。
そもそも、たかが消費電力 3.5Wの敵に、何をムキになっているのだろうと(ry
2018年10月11日追記
10月に入り涼しくなって来たにも関わらず、さらに足掻く。
表題が表題なので、比較データは記載しないけど、こちらのほうが冷却性能は上でした。
熱伝達の式を見ればば明らかなことで、伝熱面積が圧倒的に大きいこちらのヒートシンクには敵いません。
$$熱の移動量=伝熱面積\times熱伝達率\times\left(T1-T2\right)…熱伝達式$$